【少数民族 ホームステイ】大学生、JICA隊員、旅行者、ロングステイヤー…など、多くの方にアカ族の山村生活を体験して頂きました

11月、アカ族の山村では、たわわに実る陸稲が黄金色に色づき始め、村はすっかり「収穫モード」となりました。

私の住むアカ族村では、2016年よりホームステイの受け入れをスタートし、

おかげさまで今年、田植えの後の農閑期には、多くの日本からのゲストの方々に、少数民族の素朴な暮らしを、体験していただきました。

今回は、そんな貴重な滞在模様を、まとめてご紹介していきたいと思います!

アカ族村でのホームステイ

まず初めに、日本からの大学生、Mさん。

彼女は、東京にある津田塾大学の2年生で、卒業論文のテーマに『タイの少数民族の諸問題』を選び、

このたび、フィールドワークの一環として、うちのアカ族村を訪問。

10日間の日程で、地元の少数民族の子供たちが通っている小学校を訪れて、校長先生に直接インタビューをしたり、

徒歩1時間をかけて、山の斜面の陸稲畑を訪れたりと、山の生活を、リアルに体験していただきました。

また、Mさんは、大学の写真部に所属していて、

11月に東京で開催された、大学写真部主催の写真展で、今回、山で撮りためた写真でフォトブックを作成し、展示してくれました。

少なからず反響があったようで、なんとも、ありがたいことです。

村でお絵描き教室

次に、JICA(青年海外協力隊)でチェンラーイ市内に駐在している、Kさん。

彼は、チェンライに本拠地を構える医療ボランティア財団で活動をしていて、

この度、「少数民族の医療問題の実情を知りたい」と、アカ族村にホームステイにやって来ました。

Kさんには、JICA以外にもう一つ、「LINEスタンプクリエイター」という肩書きがあり、絵を描くお仕事もしています。

そのため、Kさんは、村の有志の子どもたちを集めて、「お絵描き教室」を開催してくれました。

おかげで、村の多くの子が絵に関心を持ち、才能のある子に対しては、今も、絵の添削指導などを行なってくれています。

⇒【 チェンラーイのJICA隊員、Kさんのブログはこちら 】

子供や動物たちと過ごす休日

そして、ついこの秋に来てくれたのは、広島大学の学生、Aさん。

彼女は、広島大学の交換留学のプログラムで、タイ最高峰の大学である、バンコクのチュラロンコン大学へ留学に来ていました。

彼女は、チュラロンコン大学で毎日びっしり授業が詰まっていて、わずか4ヶ月の短いプログラムでありながら、

その合間を縫って、フィールドワークのために、アカ族村を訪れてくれました。

もちろん、フィールドワークとは言っても、1日中研究をするわけではありません。

むしろ、子供たちと山登りをしたり川遊びをしたり、そうした日常の体験の一つ一つこそが、貴重なフィールドワークとなります。

今回、Aさんに体験してもらったのは、豚の飼育です。

タイでは伝統的に、バナナの木の幹を削って家畜の餌にするのですが、

この削り作業は、手動だとなかなかの重労働です。

豚を10匹も飼育している家であれば、幹を削って豚の餌を作る作業だけで、1日が終わってしまうほどです。

零細の養豚農家が減っている件

しかし、一つの家庭で、こんな重労働が出来るのも、以前は、どこの村も「子だくさん」で、豚の世話は子供たちの仕事だったからです。

しかし、近年は山も少子化で、かつ、「学校の課題が忙しい」なんていう意味不明な言い訳(?)をする子が増えていますから、

零細農家の場合、「豚を買っても世話をする人がいない」という状況が、各地で見られます。

一方、我が家では、昔ながらの方式で、子供が豚の飼育していますので、

Aさんには、それらの作業のお手伝いをしていただきました。

「ボランティアツアー」の実態

彼ら、アカ族村に滞在に来てくれたゲストのなかには、

別の財団の「ボランティアツアー」というものに参加経験がある人もいます。

ここで特に「〇〇財団がヤバイらしい」と、名指しをするつもりはありませんが、ゲストの体験談によれば……

高額の参加費を徴収されたにも関わらず、現地の人との触れ合いの時間も少なく、実際のボランティア活動も、ほとんどなかったそうです。

こうしたボランティアツアーは、間にエージェントが絡んでいたり、航空券や宿泊費用が込みの「パッケージ」になっていることが多く……

そのため、「実際の滞在経費」以外の、余分な費用がかかってしまいがちです。

また、「滞在期間中のプログラム」というものが事前に決められているため、いざボランティア活動が開始された後に、

「こんなはずじゃなかったのに……」と、参加を後悔するケースもあるようです。

大学生のMさんは、こうした高額の「ボランティアツアー」で苦い経験をしたのちも、

「やっぱり、少数民族の村で滞在をしてみたい」と、ネット内を検索し続け、

最後に、うちのアカ族村の公式サイトである「アカ族.com」にたどり着いた、と言っていました。

うちのホームステイでは、基本的に「ただ滞在してもらうだけ」ですから、そうした追加料金とは一切ありません。

ゲストから、「〇〇に行ってみたい」「〇〇をしてみたい」という希望があった時にのみ、実費を徴収する、というシステムです。

そのため、

「特にボランティア活動をしたいというわけではないのだけれど、とりあえず、少数民族の村に滞在してみたい」

というゲストの方々にも、満足していただいています。

一周回って、少数民族の村

上記でご紹介した、ボランティアやフィールドワーク以外にも、純粋に、旅行で訪れてくれる人もいます。

東京で企業戦士として働くNさんは、自他共に認める、大のタイ・フリーク。

会社の休みのたびにタイを訪れ、タイへの渡航歴は、すでに数十回を数えています。

彼は、タイの名だたる観光地やアクティビティを、一通り制覇したあと、

「タイで、こういう田舎暮らしを求めていた」

と、アカ族村を訪れました。

これは、「一周回って、やっぱりのどかな山村がいい」ということに気づいて、開眼(?)したケースです。

都市は飽きる

実際のところ、「都市」というものは、刺激も多い分、「飽きるのも早い」という特徴があります。

例えば、

都市に、外国料理レストランやおしゃれなカフェなど、魅力的なアクティビティーが「10個」あったとして……

その10個に、1年間通い続けるかというと、そんなことはないですよね。

10個のうち、「週3で通っている」というところもあれば、「1回行って飽きた」というところもあるわけです。

こうなると、飽きてしまった空隙を埋めるため、また新たに「次の刺激」を求めなければいけなくなります。

タイを数十回訪れているNさんは、ある時期から、このことに気がつき、

「タイの観光地を巡る」という旅のスタイルを、一切やめたそうです。

今ではNさんは、タイ国内に「のどかな山村のゲストハウス」の馴染みを、数ヶ所定め、

仕事の合間を縫って、数日間タイへ来て逗留する…というスタイルとなりました

ロングステイヤーの訪問者も増加中

また、若い人たちだけではありません。

NPO法人『南国暮らしの会』のチェンマイ支部からも、代表者数名が、うちの村を視察に訪れました。

これにより、今後は、

タイのロングステイヤーに向けても、アカ族村からの情報発信が行なわれていくようになります。

訪問の日が、ちょうど「中秋の名月」の期間でもあったことから、『南国暮らしの会』の代表の方は、北タイの有名店の月餅を、差し入れに持って来てくれました。

また、夏には、同じくチェンマイでロングステイをしているIさんが、チェンマイから自家用車を5時間運転して、うちの村を訪れました。

Iさんも、「途上国でのボランティア」に関心を持って、うちを訪れてくれた人の一人です。

ちょうどスイカのシーズンだったため、Iさんは、大量のスイカを、差し入れに持って来てくれました。

その総重量は、なんと12kg。

大きな米袋いっぱいのスイカです。もちろん、村の子供たちは大喜び。

マンゴーの季節には、「15kgのマンゴー」を差し入れてくれたゲストもいます。

これももちろん、村の子供たちが翌日までに食べ尽くしました。

食べ物のほうがいい?

よく、山の子供たちへのこうした差し入れで、

「ノートや鉛筆など、文房具を大量に買い込んで配る」

という人がいるのですが、これはあまり、お勧めしません。

これについては、別の記事で詳しくご紹介していますが、一言で言うと、山の子供達の多くは、「学業」にそれほどの関心がないんです。

例えば、「紙と鉛筆」を例にとって考えてみましょう。

絵や文章が好きな子供にとっては、「紙と鉛筆」は嬉しい差し入れです。

でも、生まれてこのかた、ほとんど勉強をしたことのないような子供は、鉛筆だけをポンと渡されても、「使い道」がわかりません。

もちろん、冒頭にご紹介した、『お絵描き大会』のKさんのように、

時間をかけて子供と接触し、子供の才能に着目して、それを開花させてあげるのは、素晴らしいことです。

でも、普通は、ちょっと村に立ち寄っただけでは、

「どの子に絵の才能があって、どの子に文章の才能があるのか」

なんてことは、解りませんよね。

そのため、才能のある子は、文房具の差し入れを「嬉しい!」と感じても、

それ以外の子にとっては、文房具に「特に興味がない」となってしまうわけです。

その点、食べ物であれば、どんな子であっても、「嬉しい」ものです。

それに、こうした差し入れをしようとする人というのは、そもそも、「学業を支援したい」という具体的な目的、というよりも…

純粋に、「子供達の喜ぶ顔が見たい!」と言って、差し入れをするケースがほとんどです。

それなら初めから、子供目線で、「子供が欲しがる物」を差し入れたほうが、お互いが「嬉しい」と思いませんか?

子供達はケーキが大好き

「子供が欲しがる物」の一例として…

村の子供の誕生日に、食べ切れないほどの「バースデーケーキ」を買ってきてくれた人もいます。

以前、別の記事でもご紹介したとおり、現在の山の子どもたちにとって、バースデーケーキというのは、一番の「ごちそう」です。

普段、ほとんど食べる機会もなく、誰かの誕生日の時にしか、食べることができません。

「海外の動画で見た、バースデーケーキというものを、たらふく食べてみたい!」

……この気持ちは、昭和生まれの人であれば、共感していただけるのではないかと思います。

「タイはどこもこういう感じなのかと思ってました」

先ほどの、Nさんのケースでも触れましたが、

「一周回って、やっぱり山村」

という人が、実は、現在タイで急増していて、今後も、この傾向は続いていくと思われます。

特に現在は、タイの経済発展が著しく、バンコクやチェンマイで滞在している人は、

「日本と同じ水準で生活できる♪」

というメリットを感じる反面……

「タイにいる気がしない。せっかく、海外の途上国で暮らしているのに、日本と、ほとんど変わらないんじゃないの?」

と、難色を示している人が増えているのも事実です。

その証拠に、うちのアカ族村でホームステイをしてくれたゲストの多くは、決まって、次のように言います。

「タイは、どこもこういう感じなのかと思ってました」と。

彼らが一様に抱いていた「こういう感じ」というのは……

村でたくさんの子供たちが野山を駆けめぐり、村人たちが高齢者を尊重して、親子孫3世代が仲良く暮らす、素朴な村……というイメージです。

実際のところ、日本のテレビ番組等で紹介される「タイ」の映像というのは……

こうした地域社会が今も根強く残る、「昔ながらのアジアの集落」というイメージですよね。

でも、今は、タイの経済発展に加えて、少子高齢化が進み、タイの村に、「子供たちがいない」んです。

私も、タイ国内の他の村を訪れる機会が度々ありますが、

「学童期の子どもたちが元気に野山を駆けめぐっている風景」

というものを、ここ数年、タイで目にしたことがありません。

「子供の数が多いこと」

……これは、どんなインフラにも勝る、貴重な資源である、とつくづく実感しています。

差し入れを配る相手がいない

また、先ほど、村に「スイカやマンゴーの差し入れ」をしてくれたゲストのエピソードをご紹介しましたが、

近年、少数民族村へのこうした差し入れでは、次のような「悩み」があります。

それは……

「山の子供達のために、大量に差し入れを買ってきたのに、配る相手がいない」

という悩みです。

山村でも少子化が進み、また、数少ない子供たちも、都市部の学校の寮に入ったりして、村にいないためです。

そのため、いざ、外国人が少数民族の村を訪れても……

「村に幼児しかいない。小中学生は、どこへ行ってしまったの?」

と、感じてしまうわけです。

その点、うちのアカ族村では、どこの家庭も子だくさんですから、

「配る相手がいない」というようなことは、基本的には、ありません。

スイカやマンゴーが何十kgあっても、1日のうちに、子供達が食べ尽くしてしまいます。

「なぜ子供がこんなにも多いのか」

ということについては、また別の機会にお話ししますが、その理由を一言で言うと、

「少子化を完全に解決できる、たった1つの方法」

というものを、日々我々が村で実践しているためです。

ですので、もしも、アカ族の村の子供たちへ、「何か差し入れを」と考えている方がいらっしゃれば、

ぜひ、準備する前に、一度事前にご相談をいただければと思います。

その時どきの旬に応じて、「子供たちが一番嬉しいもの」を、お伝えすることができます。

まとめ

さて、今回は、若干「宣伝めいた」記事になってしまいましたが(笑)、特に、そういう意図で書いたわけではありません。

そうではなく、「タイの山村の素朴な暮らし」というもの自体が、おそらく多くの方にとっては、未知の領域です。

それを知っていただこうと、今回、この場をお借りして、ご紹介した次第です。

なお、うちの村は、山あいの僻地にあり、もちろん空調はなく、バストイレは共同です。

そのため、滞在者には、ある程度の「体力」と「環境適応能力」が求められますが、

果敢にやって来られたゲストさんには皆、それぞれのニーズに応じた、貴重な滞在経験をして頂いています。

これを期に、「古き良きタイランド」というものに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

これらの一連の記事は、北タイの無料情報誌『ちゃ~お』でもご紹介していますので、関心のある方は、ぜひそちらもご覧になってみてくださいね!