今回は、タイ北部の観光地、メーサローンの「烏龍茶」にスポットを当ててみよう。
烏龍茶には各種ビタミン、ミネラルのほか、カテキンやテアニンなどの生理活性成分が含まれ、血糖値や血圧の調整作用や老化抑制作用、リラックス作用などの効果が知られている。まさに健康食品の代表選手だ。
小台湾メーサローンで、烏龍茶を極めてみよう!
メーサローン旅行では、烏龍茶は欠かすことのできない要素だ。町中に林立する茶屋は、すべて自社ブランドの茶葉を使用し、10軒回れば10軒とも味が違う。
限られた滞在期間中にすべてのお茶を味わい尽くすのは不可能に近いが、そのなかで自分だけのマイ・フェイバリット・ティー(お気に入り)を見つけるのは、メーサローン旅行の楽しみの一つでもある。
今回は、メーサローンの烏龍茶とその歴史について、少し深く掘り下げてみよう。
(今回の記事は、『ちゃ~お』281号に掲載された記事を転載したものです)
烏龍茶あれこれ
メーサローンでの滞在は、お茶の試飲がかなり大きなウェイトを占める。ここでは、メーサローンのお茶に関する基礎知識をざっと見てみよう。
お茶は、酸化発酵の度合いによって種類が分けられ、本場中国では色の名前を付けて区別されている。全く発酵させない「緑茶」、完全に発酵させた「紅茶」、そしてその中間にある半発酵の「青茶」だ。その他、黒や黄、花茶などもあるが、最も一般的なのは「緑」「紅」「青」の3つで、今回の主役である烏龍茶は、半発酵の「青茶」に属する。
メーサローンで製造、販売されているのは、ほとんどが烏龍茶だ。年間5回収穫が可能で、流通量は50t以上とも言われている。茉莉花茶(ジャスミン・ティー)もあるが、メーサローンならではというわけではないので、やはりメーサローンでは烏龍茶をたしなんでみたい。
「烏龍茶」というのは総称で、烏龍茶となる茶葉の中にもさまざまな品種がある。現在メーサローンで栽培されている品種は8種とも10種とも言われているが、主なものは次の6つだ。
①軟枝烏龍
②金萱
③菁心
④四季春
⑤アッサム
⑥梅青
このうち下2つのアッサムと梅青は、メーサローンで以前から栽培されていた品種、上の4つが、台湾から新たに持ち込まれた高品質の烏龍茶だ。これらは茶葉の細かさで12号や17号などの番号がふられており、番号で呼ばれることも多い。
たとえば17号(ブー・スィップ・チェット)と言えば①の軟枝烏龍を指し、12号(ブー・スィップ・ソーン)と言えば②の金萱を指す。一般に号数が少ない(葉が細かい)ほど高級とされているが、どちらをおいしいと感じるかはもちろん個人の好み次第だ。
一番人気は、「東方美人」
また、上記6つは品種名であるが、店頭ではこれとは別に商品名がつけられているので、若干ややこしい。最も人気がある商品は「東方美人(中国語でトンファンメイレン、タイ語でチャー・ナーンガーム)」で、日本へも多く輸出されている。
一口に「東方美人」と言っても、金萱の東方美人もあれば、菁心の東方美人もあり、一様ではない。しかし我々はお茶の専門家ではないので、とりあえずは品名の「東方美人」と、号数の12号、17号を覚えておけば、茶屋での会話も十分楽しめる。
僕も今回の滞在中、連日茶屋をハシゴしていたので、試飲のたびに「これは12号ですか?」などとツウぶって聞いてみたりしたのだが、勝率は芳しくなかった。淹れ方や濃度によっても味に違いが出るため、やはり一朝一夕では利き茶は難しい。
メーサローンの茶屋では、入るとすぐに「ドゥーム・チャー・マイ・カァ?(お茶を飲みますか)」、「チム・チャー・マイ・カァ?(お茶を味見しますか)」と聞かれる。5軒回れば最低でも5杯茶を飲むことになるので、メーサローン滞在中はトイレの回数が飛躍的に増大する。
そのためメーサローンには無料の公衆トイレが多く、茶屋でも「トイレはこちら」の看板を出しているところが多いので、トイレが近い人でも安心して茶を飲み続けられる。
お茶を試飲してみよう!
お茶の試飲について少し紹介しておこう。試飲の際は、ガラスの急須(茶海)と、小型の湯呑みに円筒形のフタがついたもの(聞香杯)に茶を注がれて出される。ここで、いきなりグビグビっと飲んでしまってはいけない。
円筒形のフタを取り、まずはフタについた香りを楽しむ。「う~ん、いい香りですねえ(ホーム・マーク!)」などと言ってみるのもいい。
香りを十分味わったのち、舌でゆっくりと味わい、それからノドへ流す。茶の味わいには、次の3つの段階があるとされ、
①聞香(鼻で香りを味わう)
②品賞(舌で味わう)
③回甘(ノドごしを味わう)
これを「清茶三品」という。これら3つの機能を十全に備えたアイテムが、「聞香杯」というわけだ。
また、客向けの試飲ではなく、茶屋の主人が直接茶に誘ってくれることもあるので、その場合の淹れ方も併せて見ておこう。ここではまず大きめの器に注がれ、そこから匙を使って小さな湯飲みに小分けにされる。
ここでも基本はやはり「清茶三品」で、鼻と舌でゆっくりと味わって飲む。
つづく