先日、地元北タイ山岳地帯の中学校の卒業式に参加してきました。
タイの学校の謎の習慣
タイの卒業式では、
「保護者が卒業生にプレゼントをする」
という謎の習慣があります。
卒業生に親がプレゼント
おそらくこのような習慣は、20世紀のころには無かったはずなのですが、
いつの間にかタイでは、「卒業式と言えばプレゼント」みたいな風潮になりました。
このため、卒業式が行なわれる学校の前では、卒業生用の花束やぬいぐるみを売る屋台が軒を連ねています。
卒業式プレゼントは意外と高い
これら卒業生向けのプレゼントは、決して安いものではなく、
何百バーツ、ものによっては、千バーツ以上もする高価なものも売られています。
アイキャッチ画像は、巨大ぬいぐるみを買っているリス族の保護者です。
ぬいぐるみの価格は千バーツと言っていました。
千バーツは本来高額
千バーツなんて、田舎の一般の感覚からすると、露店の屋台でポンと出せるような額ではありません。
しかし、卒業式はまるでローイクラトン(灯籠流し)やソンクラーン(水掛祭り)などと同じような、「お祭りムード」になっているため、
保護者たちも、ここぞとばかりに「散財」をするわけです。
タイ族の模倣
そして、重要なポイントは…
こうした「贈答」の文化は、少数民族たちの「固有の文化」ではなく、
あくまでも、
「タイ族の文化を模倣したものである」ということです。
多数派の文化に「あこがれる」心理
……これは、現代タイの少数民族たちに共通して見られる、「少数民族あるある」の1つです。
つまり、平たく言えば、
「タイ人がやっているものは、何でもオシャレでカッコいい」
という感覚です。
世界中で見られる傾向
これは、南米大陸で言えば、
先住民のインディオの文化よりも、支配言語であるスペイン語の文化が上位に扱われがちな状況と、よく似ています。
タイも同様で、現代のタイの山岳部の人たちは、
伝統文化を重視しなくなり、タイ族の言語や文化、やり方を、「すべて良いもの」として模倣し、導入しようとします。
卒業式も、「タイ族式」
今回ご紹介している「卒業式に高価なプレゼント」などは、その最たるものです。
そもそも山岳地では、今も海外の慈善財団から寄付や就学支援を受けている家庭も多く、
建前上は、「生活がままならないほど貧しい」ということになっています。
しかし、ひとたび卒業式などの「イベント」になると……
どれほど生活が困窮し、支援を受けていた家庭であっても、親類縁者から借金をしてまでも、プレゼントを買おうとします。
山には元々、そんな文化は無かったにも関わらず、です。
そして、山の学校には、タイ族の子は一人もいないにも関わらず、です。
すべては見栄と虚勢のため
たとえ、海外の財団から経済支援を受けているような貧困世帯の家庭であっても……
親は周囲への見栄のためにプレゼントを買い、そして、子供も友人への見栄のためにプレゼントをねだります。
結果として、何百、何千というお金が、たった一日で散財されます。
「学費は援助してもらうが、
見栄のためのお金は惜しまない」
……もちろんこれも、尊重すべきタイの固有の文化ではあるのですが、
やはり、「なんとも非合理だなぁ」と感じます。
「私たちはタイ族ではないのだから、卒業式も無理にタイ族の真似はせず、山の暮らしにのっとって質素に行ないます!」
というスタイルでも良いんじゃないかな、と思うわけです。