タイの少数民族の村で自然食を作る取り組み

■「自然食を作ろう選手権」という謎の大会

先日うちの自治体で、「自然食を作ろう選手権大会」という一風変わったイベントが行なわれました。

うちの自治体には合計15ほどの村があり、村ごとで何かを競う合う、という催しが定期的に行なわれています。

今回のテーマは、「自然食」。

これはつまり、

「村から選ばれた代表が、いかに自然に近い料理を作るか、その自然さを競い合う」
という趣旨です。

各村の代表が広場に集まり、司会者の号令のもと、料理がスタートしました。

まずは火の起こし方。
これも採点基準になっていたようです。

ほとんどの参加者は、ちゃんと(?)マキで火を起こしていたのですが、中にはちょっと近代的な村人もいて、彼はガスコンロを持参していたのですが、こういうのは減点されます。

その他に、食材を市場で買ってきた村もありましたが、これも減点対象でした。

食材を、「いかに自分たちの村の中で調達するか」が得点のポイントになっていたようで、市場のプラーニン(ティラピア)を使用した村は、こうした理由から減点されてしまいました。

また、調味料も、重要な採点基準の1つです。

使っても良い調味料は、塩と唐辛子のみ、味の素は少量ならギリギリセーフ、というルールになっていました。

今でこそ、山の人たちも醤油(スィイウ)やナンプラーなどを料理に使うようになりましたが、

つい最近まで、山で調味料と言えば、塩と唐辛子の2種類しかありませんでした。



以上をまとめると、この大会のルールは3つ。

① マキを使うこと
② 食材は山の周辺で採れたもののみ
③ 調味料は塩と唐辛子のみ

つまり、「いかに昔ながらの料理を、昔ながらの製法で作るか」というコンセプトです。

このように箇条書きにされれば、ルールも理解しやすいのですが、タイの役所は、「直前まで詳細を文書で伝えない」ということがよくあります。

このため、結局大会当日まで、多くの参加者はこの「自然食選手権」の趣旨を理解できていませんでした。

また、最近の山岳部では、低地よりも少し遅れてバブルがやってきたような状況もあります。

今回も、「料理選手権なら、豪華な材料を使って、タイ人顔負けの料理を作ってやろう」と考えていた参加者も少なからずいたようです。

コンセプトもあいまいなまま、大会は進行していき、最終的に、うちの村が優勝しました。

うちはこの大会にかなり真剣に取り組んでいて、自然食に徹していました。

市場で買った食材は一切使わず、トマトの代わりに山の野生の瓜、プラーニンの代わりに天然の川魚、もちろん、味付けは塩と唐辛子のみ、という徹底ぶりで、見事最高得点を勝ち取りました。

こういうイベントは、とても有益だと思います。

「タイの山岳地で伝統文化が失われつつある」と言われて久しいですが、

今回のように、昔ながらの生活習慣を思い出させてくれるようなイベントが、今後も積極的に開催されると良いなぁと思います。