アカ族村のクリスマス

現在、北タイ各地のアカ族村では、村ごとキリスト教に改宗しているケースが多く、

こうした村には、クリスマスの習慣もあります。

しかし、アカ族のクリスマスには、1つ不可解な点があります。

それは、クリスマスの「日付」が決まっていないことです。

先日、ブランコ祭りの時にも触れましたが、

アカ族のお祭りは、基本、日付が毎年同じではありません。

毎年、お祭りが近づくたびに、各村の長老同士が集まって、

「合議制」で日程を話し合って、その年のお祭りの日を決めます。

このシステムは、「村ごとに日程をずらすことで、他の村のお祭りにも参加できるから」というメリットがあり、

ブランコ祭りをはじめ、アカ族の様々なお祭りの日程は、このように合議制で決められています。

しかし、クリスマスは、アカ族固有のお祭りではありません。

あくまでも、舶来のお祭りです。

なので、「クリスマス」と称して祝うのであれば、本来は12月25日に祝うべきですよね。

それなのに、アカ族伝統のお祭りと同じように、日程は合議制で決められます。

また、お祭りの内容も、その年の新米や豚を供出し合って、長老に食べさせる、というものですから、

これはまさしく、アカ族のお祭りのパターンです。

しかし、お祭りの会場を教会にして、賛美歌を歌い、神父の説教などもあるため、

祭りの内容はアカ族風でも、祭りの名前は「クリスマス」になっている、というわけです。

なんとも、不思議な感じですよね。

「だったら初めから、クリスマスという名目にしなくていいんじゃないの?」と思いませんか。

アカ族の12月のお祭り、ということにすれば、もっとスッキリするはずです。

一体このお祭りは、アカ族伝統の12月のお祭りなのか、それとも、キリスト教会のクリスマスなのか……

おそらく、一般のアカ族の住民にとって、そこはあまり重要ではないのでしょう。

「伝統の祭りがクリスマスという名前に変わった」という程度の認識なのだと思います。

しかし、これによって、アカ族の先祖崇拝の濃度は、確実に薄まっていきます。

こうなると、民族固有の伝統を愛する私のような物好きな外国人は、やはり一抹の寂しさを覚えるのです。