この章では、アカ族が先祖代々伝えている、珠玉の格言をご紹介していきます。
【アカ族の格言集】目次
1:天国編
「人は幽体を経て、霊の世界へ赴く」~人は死ぬとどこへ行くのか
「あの世でも血まみれ」~死んだ直後、人はどのような状態になるのか
2:結婚・出産・育児編
「授乳中の母親はかぼちゃを食べるべし」~自然の食生活で、母乳をふんだんに出す方法
3:対人関係編
「あの世ではもう会わない」~生き方が全く違う相手と一緒にいなければならないときの対処法
はじめに
そもそも私が、アカ族伝統の格言を記録するようになったきっかけは、村人たちとの何気ない会話からです。
私がアカ族の村で暮らすようになって、アカ族の人たちとアカ語で会話ができるようになったばかりの頃…
普段何気なく交わしている会話の中で、アカ族の人たちが、ふと唐突に、
「〇〇っていう言葉があるでしょ」
のようなフレーズをよく使っていることに気がつきました。
それらは、ことわざのような、とても短いフレーズで、それでいて、人生の深遠な真理が詰まっている、そんな一言でした。
それで、こうした格言の1つ1つに興味を持った私は、アカ族との会話中に格言が出るたびに、
「えっ、今の言葉はどういう意味?」
と、聞き返してメモを取る、という作業を続けました。
私が聞き返すと、その都度彼らは、アカ族に代々伝わっている格言を、私に教えてくれました。
それらの格言は、結婚や出産に関するものから、人の生き方、はたまた、死後の世界の構造などを端的に表現したものなど、内容が多岐に渡っていて、
全体としてまるで1つの書物のような、膨大な知識を伝えていることがわかりました。
これらの格言は世代を超えて、現代に生きる私達にとっても、人生の大切なヒントを教えてくれるものばかりです。
そこで私は、
「アカ族のこれらの格言は、絶対に誰かが記録しておかなければならない」
との、使命感のようなものを抱き、
それ以来、アカ族の長老たちとの会話の中で登場した格言を記録する、という生活がスタートしました。
現在のアカ族の若者たち
私がこうしたアカ族の伝統の格言に関心を持つ一方で、現在のアカ族の若者たちは、格言に関心を持つどころか、普段の会話でアカ語を話すことすらしなくなり、
アカ語の知識の継承者は、着実に減少しつつあります。
アカ族はもともと他の少数民族よりも人口が多い分、アカ語の話者が絶滅する、というような事態にはならないかもしれませんが、
しかし、格言をはじめとする、民族伝統の知識などは、ますます次世代へ継承が難しくなっていきます。
そこで私は、自分の関心もさることながら、アカ族の次の世代たちのためにも、「これらの格言は、アカ族の伝統として、残さなければならない」と感じた次第です。
そのため、当サイトでは、格言の訳文だけでなく、アカ語の原文と発音も、極力、掲載してあります。
こうすることで、将来このサイトを読んだ日本人が、アカ族に読んで教えるときに、アカ語のカタカナ発音をそのまま読めば、アカ族の若者に、格言の内容を伝えることができます。
それを聞いたアカ族の若者は、
「あー、言われてみれば、祖父母がそんな格言を言っていたような気がするなぁ」
と、思い出すはずなんです。
そして、その1人が、たった一言でも、自分の子孫にアカ族の格言を伝えることができれば…
アカ族の格言に込められた伝統の精神は、次世代へと確実に継承されていくはずです。
本書の構成
この章でまとめているアカ族の格言は、大きく、4部構成となっています。
1:天国編
天国編の格言は、主に、死後の世界の構造について、教えたものです。
●「人は死後、どこへ行くのか」
●「生きている人と死んでいる人とでは、どのような関連性があるのか」
●「なぜ先祖を敬わなければならないのか」
これらの、死後の世界の知識は、現在人が忘れてしまったものばかりです。
格言として覚えておけば、「死後の世界は大体このようになっている」ということを、いつでも思い出すことができます。
そして、死後の世界のしくみを知ることで、現在の生を、より充実したものにしていくことができます。
死を知らぬ者は生をも知らない
2:結婚・出産編
結婚・出産編でご紹介している格言では…
●「男女のあり方」
●「結婚後の夫婦のあり方」
●「妊娠中にすべきこととすべきでないこと」
●「出産に際して知っておくべきこと」
●「授乳中に母親がすべきこととすべきでないこと」
これらのことについて、克明に言及されています。
現代人はこのように聞くと、
「どうして、結婚・出産に関する格言がそんなに多いの?」
と、感じるかもしれません。
これは、家族の伝統的な宗教観の1つである、「天皇崇拝」がもとになっています。
先祖崇拝について、詳しくはこちらの記事で紹介していますが、大まかに言うと…
●先祖は絶対的に尊敬しなければならない対象である
●先祖を大切にすることで、自分の子孫は先祖からの加護を受けることができる
●自分自身も、子孫から見れば、いずれは先祖になる
●家を存続させ、子孫を繁栄させていくことが、先祖への供養につながる
この4点が重要で、特に最後の「子孫の繁栄」が、最重要のポイントです。
子孫を繁栄させるためには、強い子を産み、育てなければなりません。
もしも健康な男子が生まれなければ、その家は、家系が断絶してしまうことになります。
先祖から何百年も続いてきた家系が、夫婦の営み1つで、存続するかしないかが決定されてしまうわけですから、
結婚・出産というものが、伝統的なアカ族にとってどれほど重要であったかは、想像に難くありません。
御家断絶、となってしまうと、まさに「ご先祖様に顔向けできない」ということになります。
つまりアカ族が、民族全体として、結婚・出産を重視しているのは、
「ご先祖様から代々受け継いできたこの家系を存続させていく」という目的感があるからに他なりません。
これは、日本人にとっても無関係ではありません。
あなたの周りを見渡してみてください。
いったいどれほどの女性が、きちんと子を産んで、育てることができているでしょうか。
そして結果的に、どれほどの家庭が、家として繁栄できているでしょうか。
現在の先進国では、こうした結婚し出産に関する重要性が、日々忘れ去られつつあります。
結婚・出産の本来の目的を、見失ってしまっているんです。
家族が伝統的に伝えている、結婚・出産に関する格言は、現代の日本に生きる私たちにとっても、非常に示唆に富んだものとなるはずです。
あなたの体は、50代にわたる父祖の血が流れている
3:対人関係編
対人関係に関する格言が多い、というのも、なかなか興味深いことです。
「すべての不幸は対人関係から始まる」
という言葉からもわかるとおり、実は私たちの人生というのは、対人関係が非常に大きなウェイトを占めています。
それは、社会というものが、人間が作った物であるからに他なりません。
そのため、この章では、人間関係の悩みを、いかに乗り切っていくか、という、アカ族伝統の知恵を、ご紹介していきます。
死ぬ時は1人。悪人と共に歩んで、死後後悔することがあってはならない。
4:人生編
アカ族の格言の最終章は、人生そのものに関する格言。
人はいかにこの人生を生きるべきか、ということを教えた格言です。
「死を知らぬ者は生をも知らない」
という言葉がありますが、アカ族の格言は、まさにそれを地でいっています。
「生」というのは、「死」という次のステップに至るための、いわば前段階です。
そのため、次のステップのことをよく理解していないと、現在のステップまでもが、おろそかになってしまいます。
たとえて言えば…
将来の夢がきちんと定まっている高校生のほうが、何も定まっていない高校生よりも、高校生活が充実するようなものです。
「高校生にとっての卒業後の進路」にあたるものが、まさに、
「生きる者にとっての死後のビジョン」
ということになります。
アカ族の格言を眺めながら、ぜひ、自分の死と生に対して、真摯に向き合ってみてはいかがでしょうか。
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