今年も、アカ族の「ブランコ祭り」の季節がやってきました。
私は毎年この時期になると、何かしらブランコ祭りに関する記事を書いています。
そのため、以前から読んでくださっている読者の方であれば、
「そう言えば、8月はアカ族のブランコ祭りだったなぁ…」
と言う情報が、記憶の片隅に残っているのではないでしょうか。
去年も書きましたが、ブランコ祭りというのは、
「日付がギリギリまで決まらない」
という、実にユニークな特徴があります。
一応、8~9月ごろに開催されることにはなっていますが、
細かい日付けはギリギリまで公開されません。
私は、この原稿を7月下旬に書いているのですが、
今年のブランコ祭りの日程は、7月下旬になってもまだ知らされていない、という状態です。
一方、タイの仏教関連のお祭りであれば、
たとえば「カオパンサー(入安居)は陰暦8月の満月」のように、陰暦から現代の日付を計算することが可能です。
しかし、アカ族のお祭りは、
特に月の満ち欠けとは関係がないため、日付けが全く予測できないのです。
そのため、例年ブランコ祭りの参加希望者は、日程調整のための多大な苦労を強いられます。
地元の人でさえ、「せっかく帰省したのに、まだお祭りが始まっていなかった」なんてことはザラにあります。
なんとも、不思議な感じですよね。
なぜ、こんなシステムになっているのでしょうか。
これは、「近隣の村で祭りの日がかぶらないよう、代表者同士が調整し合っているから」というのが理由だと言われています。
たとえば、
A村でブランコ祭りがあった日には、その隣のB村ではブランコ祭りは開催されていませんから、AとBの村人は、互いに遊びに行き合うことができます。
これが、村同士で日付をズラすメリットです。
では、そもそも「近隣の村に遊びに行くこと」がなぜここまで重視されているのか、と突き詰めて考えていくと……
それはやはり、「配偶者探し」という祭りの本来の目的に行き着くのだろうと思います。
現代はアカ族の村でも近代化が進み、こうした意味合いも薄れつつありますが、
それでも年に一度のブランコ祭りともなれば、若い男女がちょっかいを出し合う微笑ましい光景をそこかしこで見ることができます。
若い男が周辺の村の祭りへ行って、自分の配偶者を探す
――こうした伝統は、「婚活システム」としては実に合理的です。
そう考えると、日程調整に時間がかかるのも、「やむを得ない」と言えるわけです。