タイで少子化が進んでいる最大の原因は? (6)卵管結紮

日本ではまだあまりポピュラーではない、卵管結紮(らんかんけっさつ)」という用語。

卵管結紮は、「タイ人女性なら誰もが知っている」と言っても過言ではないほど、

タイで非常にメジャーな外科手術です。

本日は、タイにおける「卵管結紮の流行」と、少子化との関係性などについて、お話ししていきます。

今回の内容は、かなり「タイ独特」だと思います。



卵管結紮手術とは、簡単に言うと、「不妊手術」のことです。

「不妊治療」ではありません。

卵管を切断、あるいは縛って、卵子が子宮に届かないようにして妊娠できなくなる手術

…これが、卵管結紮です。

タイ語では、「ทำหมัน タム・マン」と言います。

そしてタイでは現在、この「タム・マン」、卵管結紮が非常に流行しています。

卵管結紮手術、つまり「妊娠できないように施す外科手術」を、タイは国を挙げて「奨励」しているんです。

この時点で、かなり違和感ありますよね。



タイでは妊婦が出産すると、病院の医師から直接、「卵管結紮をしますか?」と聞かれます。

うちも、三人目四人目五人目を出産した後、毎回「卵管結紮をしますか?」と聞かれました。

そして、私はそのたびに、「いや、手術は受けません」と言うのですが、

タイ人の医師たちは、まるで宇宙人でも見るかのように、怪訝な顔をしたものです。



基本的にタイ人は、「自主的な避妊」が苦手です。

タイ人の多くは、「いつ、何を、どうすれば妊娠するのか」という正確な知識を持っていません。

そのため、

「卵管結紮をしなければ、
 いつか必ず妊娠する」

という思い込みがあります。

また、タイ人自体が、性に対して非常に貪欲ですから、

本当に妊娠し続けてしまう、というケースも多いんだろうと思います。

結果的にタイでは、

「このまま妊娠し続けるか、
 卵管結紮をするか」

という2択になってしまいます。



これに加え、タイ人医師自らが手術を勧めてきますから、こうして、卵管結紮手術はタイでどんどん一般化していくわけです。



また、【帝王切開】の記事でもお話ししているように、

タイ人は医療サービス受けることを全て「良いこと」と考えます。

卵管結紮もしかりで、「受けられるなら、受けたい!」という発想をします。

つまりタイでは、

「帝王切開と卵管結紮」が、もれなく「セットメニュー」になっている、ということです。



しかも、これに加え、
タイではなんと……

この卵管結紮手術が、「無料」なのです。

無料というか、正確に言うと、タイの国民健康保険の範囲内で、「0割負担」で手術が受けられます。

医師からも勧められ、しかも「無料」となれば、

「無料でできるなら、やっておこう!」

となるのも当然のことです。

こうして、今やタイでは、20~50代の経産婦のうち、なんと「約90%以上」が「卵管結紮」を行なっているのです。

90%が卵管結紮っていうのは、
かなり驚きですよね。



そして、卵管結紮は、条件さえ整っていれば、また外科手術によって卵管を元に戻すことが可能です。

これを「再建術」と言います。

タイは性転換手術が有名ですが、再建術もかなり発達しています。

要は、「性に対して手を加える」という手術そのものが、タイ民族の「得意技」で、タイでは非常に一般的な行為なのです。

このへんも、性に貪欲なタイの国民性を象徴しています。

タイでは、数万から数十万バーツで再建術を受けることができます。

卵管結紮(不妊手術)は無料なのに、
再健術(再度妊娠)は有料……

これはつまり、国の政策として、卵管結紮術を「奨励」していることにほかなりません。

要は、

「もう君たちは産まなくていいよ」
「再建術を受けるお金がある人は産んでいいよ」

という、政府から人民へのメッセージだと言えるでしょう。



一方で、タイ民族特有のニーズもあります。

それは、性に貪欲なタイ人たちの、「性生活を心ゆくまで楽しみたい」というニーズです。

海外の人権団体などは、決まって、タイの性産業を「悪事」として槍玉にあげようとしますが、

それ以前に、タイ人自体がそもそも、「性に対して貪欲過ぎる」という国民性なのです。

性に対してもっと貞淑な国なら、ここまで性産業が発達したりしません。



つまり、卵管結紮に関しては…

タイ政府側の「人口を抑制したいから、人民に卵管結紮を受けさせたい」というニーズと、

人民側の「性生活を楽しみたいから、卵管結紮を受けたい」という両者のニーズが、

ぴったりと合致している、ということになります。



…こうした事情から、現在タイでは、卵管結紮が非常に普及しています。

タイ社会全体で、3人目、4人目の赤ちゃんを「妊娠させない」ための状況がどんどん進行しているため、

結果的に、タイの少子化も進行する…というわけです。

(つづく)

追記

今回の記事をお読みになった読者から、

「日本で卵管結紮をしたけれど、また妊娠したいので、タイで再建術を受けられるんでしょうか」

という問い合わせをいただきました。

ただ、タイの場合は、「タイ人医師が卵管結紮した個所を、タイ人医師が再建する」という手術ですから、

ある程度、再建しやすいのだろうと思います。

ただし日本の場合は、再建不可能な卵管結紮をしているところも多いと聞きます。

日本でどのような卵管結紮が行なわれたかは、専門家が見ないことには分かりませんので、

これはもう完全に、「ケースバイケース」になります。