【自立支援】アフリカやタイの孤児たちの民芸品や伝統工芸品のプロジェクトが成功しにくい理由

ボランティア アジア アフリカ 自立支援

今回は、「発展途上国の自立支援プロジェクト」というものについて、考えてみましょう。

アジア・アフリカ地域の孤児や女性たちが作った民芸品を販売し、その収益が現地に寄付される

というシステムの民芸品や手芸品を、見たことがあるかと思います。

これは、比較的よくある自立支援のシステムです。

自立支援プロジェクトとは

つまり、

支援を必要としているアジア・アフリカの子供や女性たちが、

そのままでは十分な支援が得られないので、

手芸品や民芸品、手作業の商品などを販売し、収益を得て、支援に充てる。

というわけです。



支援を「待つ側」の人たちが、ただ漫然と待っているだけではなく、

きちんと「仕事」をして、その対価として報酬を得て、支援を受けることができるため、

このシステムは、「自立支援」の優れたモデルケースとして、世界各地で採用されています。

自立支援プロジェクトはうまくいかない?

しかし、この自立支援のやり方、じつは、、、

うまくいっている所は、
決して多くはない

という印象です。

もちろん、

うまくいっているところも多くあり、そういうところは自然と有名になっていくので、社会的にも認知されていきます。

「アカ族のコーヒー」という成功例

たとえば、タイでよく見かける、

「アカ族のコーヒー」

などは、うまくいったケースの典型です。

なにせ、カフェ激戦区のチェンマイで、「アカアマコーヒー」という看板を掲げて喫茶店をオープンし、

今や「チェンマイで一番おいしいコーヒー」と言われるほどになりました。

現在、多くのアカ族の人たちが、このコーヒー事業に雇用され、収入を得ることができています。

これはもう、完全な「成功例」と言ってよいでしょう。

こういう成功例があると、

「産業を作って雇用を生み、恵まれない人たちの自立を支援する」

という自立支援の形態は、非常に合理的であるかのように見えます。

雇用創出型の自立支援、成功率は高くない

しかし、、、

「成功例以外の圧倒的多数は、
 うまくいっていない」

ということを、私たちは知る必要があります。

なかでも、最も失敗しやすいのが、冒頭に掲げた民芸品、手芸品の類です。

たとえば、

民族の刺繍をあしらった、財布やポーチなど。

こうした「自立支援プロジェクト」では、

支援団体が地元の人たちに製作を依頼し、出来上がった製品を日本に運んで販売し、その収益を地元の人たちに分配する

というシステムです。

気になるお値段は…

しかし、価格設定の際、、、

価格に「寄付金」が上乗せされていることがあります。



仮に、

「アフリカの女性が作った財布、2千円」

という商品があったとしましょう。

この財布の「2千円」という価格の原価を考えると、おそらく、

原価は300円ぐらいで、700円が収益、残り千円は支援団体への寄付、という具合だと思います。
(あくまでも例です。全部が全部そういう価格設定ではありません)

一般の人は「高い」と感じる

しかし、こうなると、、、

このアフリカの2千円の財布は、寄付金が上乗せされているぶん、「世間一般の2千円の財布よりも割高」ってことになります。

これでは、やはり売るのは難しいと思いませんか?



もしも、お客さんが、アフリカの人たちに対して、よっぽど共感や感情移入ができているなら、

「よし、買ってあげよう!」

という気にもなるかもしれません。

ボランティア アジア アフリカ 自立支援

でも、そうでないなら、普通はこうしたハンドメイドの民芸品は、「割高だ」と感じます。

なぜなら、寄付金の額が価格に上乗せされているからです。

寄付のほうが早い??

だったら、

「現金で千円寄付してください!」

と、お願いしたほうが、コストが少なくて済み、売る方も買う方も、よっぽどラクだと思いませんか?

この辺が、「自立支援の民芸品」がうまくいきにくい理由の1つなのです。

商品としての価値

では、先にご紹介した、アカ族の「アカアマコーヒー」は、なぜ売れているのでしょうか。

たった一つのシンプルな答えは、

「コーヒーとして普通においしいから」

です。

「寄付をしたい慈善家たち」に
売れているのではなく、

「純粋にコーヒー好きの人たち」に
売れている、

というのがポイントなのです。

そのモノを通じて価値を提供できているか

やはり、モノを作って売るからには、その商品自体に価値が無くてはいけません。

価値があれば売れるし、価値が無いものを売るのは難しいことです。



…と、このように考えていくと、

もしも、民族の財布やポーチ、アクセサリーなどを売るのであれば、

まずは、理念よりも何よりも、そのモノ自体に価値が無くてはならない、ということです。

「モノを売ること」が一番難しい

しかし、こうしたプロジェクトの多くは、

「恵まれない人たちへの寄付」が全面に出過ぎてしまっています。

そのため、肝心の「商品としての価値」をアピールできていない、というケースが少なくありません。

そうして、経営難に陥り、プロジェクト自体が頓挫してしまう、という悪循環なのです。



当然のことながら、モノを売るのは難しいことです。

「アフリカの女性が作ったものだから売れる」

なんていう単純なものではないですよね。



結果として、

「自立支援の販売プロジェクトはうまくいきにくい」

という現状になっているわけです。



「じゃあ、どうすれば、自立支援はうまくいくのか」

ということについては、今後も引き続き、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

(つづく)