【黒いもち米】北タイ名物の健康お菓子、真っ黒いお餅の「カーオプック」とは【前編】

北タイの黒ずくめのお餅、「カーオプック」をご存じでしょうか。

寒さが特に厳しくなるこの時期、タイの一部のローカル市場では、お餅を七輪で焼いて、その場で食べられる屋台が登場します。

こんがりと焼き上げたお餅の香ばしい匂いが、なんとも食欲をそそりますよね。

その名を、「カーオプック」といいます。

もともとは中国系の家庭料理で、タイ人の間ではあまりメジャーではありませんが、その独特の香りと味わいから、熱狂的なファンも多いです。

黒ずくめのお餅「カーオプック」とは

タイの汁そばや、炒め物なども、作った直後は確かに暖かいのですが、

屋台で食べると風も吹きさらしで、食べている間も寒く、料理もすぐに冷めてしまいます。

そんな時、日本のお鍋やお餅が、ついつい恋しくなりますよね。

私もタイに来たばかりの頃は、 冬が来るたび、ずっとそのことを考えていました。

「冬はこんなに寒いのに、体を温める料理が全然ないなんて!」と。

でも、実はタイにも、冷えた体を温めてくれる、ほかほかの焼きたてお餅のお店があったんです!

このお餅のことを、タイ語で「カーオブック」といいます。

北タイの冬は、特に早朝は、靴下なしではいられないほど、身を切るような寒さの日もありますよね。

毎日こう寒い日が続くと、タイにいてもやっぱり、温かい料理が食べたくなってきませんか?

今回は、そんな寒い北タイの冬にピッタリの、黒ずくめのお餅「カーオプック」について、ご紹介していきます!

1.カーオブックはどこの料理なの?

もともとタイには、日本のようにお餅をこねて食べる習慣はありません。

この習慣をタイへ持ち込んだのは、中国やミャンマーからの移民たちです。

中国雲南省では、黒いもち米を「黒糯米」と呼んでいて、現在も主食として食べる習慣があります。

今回ご紹介する「カーオプック」は、これをこねて薄く伸ばし、黒糖などで味付けをしたものです。

タイではあまりメジャーな食材ではありませんが、

中国国民党やジンホー族、タイヤイ族などの間では家庭で手軽に作るおやつとして、広く好まれています。

そのため、タイでカーオプックを売っている人は、中国系やタイヤイ族など様々で、呼び名や作り方も、それぞれ微妙に違っていたりします。

一般に広く通用している名称としては「カーオプック」ですが、その他にも、

「カーオヌック」、「カーオプック・ンガー」など、様々な呼び名があります。

ですが、今回の特集では、カーオブックの名称で統一しておこうと思います。

2.カーオプックの食べ頃はいつ?

カーオプックのシーズンは、12月から2月ごろ、年間で一番寒い時期です。

これは、カーオブックの材料となる、黒ゴマの収穫時期と一致しています。

現代は、スーパーマーケットへ行けば、どんな食材でも年中買うことができるので、

カーオブック屋台も秋ごろから出ていますが、本来は、取れたての黒ゴマが豊富にある、冬季限定のメニューなんです。

黒色の食材が体に与える影響とは

カーオブックは、全体が黒い色をしていますが、これは、黒もち米に黒ゴマを混ぜているためです。

味付けも黒糖がベースですから、まさに黒づくしです。

漢方医学の世界では、「体を温めること」を非常に重視しています。

体温が1℃下がると、免疫力は30パーセントも低下してしまいますから、

体温を保つことは、健康を維持する上で最も重要なことなんです。

中国では数千年もの昔から、この事を経験で知っていたんですね。

そのため漢方医学では、「体を温めるか、冷やすか」という基準から、あらゆる食材を分類しています。

中でもユニークなのは、それが食べ物の「色」ごとに分類されている、という点です。

一般に、青・白・緑の食べ物は、体を冷やし、

赤・黒・橙の食べ物は、体を温める、とされています。

そのため、黒づくしのカーオプックは、全ての材料に体を温める効果があり、これを1年で一番寒い時期に食べる、というのは、とても理にかなっています。

特に、冷え性で悩んでる人にとっては、カーオプックは かなりお勧めです。

カーオブックはどこで売っているの?

昨年8月にちゃ~おの巻頭特集に掲載された『クンユアムの思い出』にも、このカーオプックのエピソードが紹介されています。

これによると、大東亜戦争中、

メーホーンソーン県のクンユアムに駐留していた兵隊さんたちも、このカーオプックのことを日本語で「お餅」と呼んで、好んで食べていたそうです。

私たちが今食べているカーオプックを、かつて日本の兵隊さんたちもこよなく愛していた…

と、考えると、なんだか熱いものがこみ上げてきませんか?

カーオプックはもともと、移民たちが初めてタイに伝えた料理ですから、タイ人の商業エリアではほとんど見かけることはありません。

チェンマイ市内でカーオプックを買える場所としては、少数民族たちが集まる金曜市場があります。

ここではジンホー族やタイヤイ族がカーオブック屋台を出しています。

北タイの冬の風物詩、路上のお餅屋台。

⇒【後編】へ続く