先日、タイでは、コメ農家を対象に、「補助金」が出されました。
1ライ(40m四方)あたり、千バーツ。
そのため今週は、地元の銀行は、現金を下ろす人たちで、大混雑しました。
アイキャッチ画像は、そのときの様子です。
うちも、コメ用の農地が6ライありましたので、6千バーツが、家族の銀行に振り込まれていました。
タイの最低賃金は、日当300バーツですから、日当20日分。
けっこうな、高額ですよね。
…実は、コメ農家への補助金、という政策は、タイではちょくちょくあります。
コメが不作、コメが値崩れ…などなど、ちょっとでも農家が打撃を受けると、国から補助金が出る…という印象です。
しかし私は、農家に補助金を渡す、という政策は、いかがなものかと思っています。
一度これをやってしまうと、
「コメが作れなくてもお金がもらえる」という感覚を、農家に植え付けてしまうからです。
実際のところ、大農場以外の、各家庭で食べる分だけを植えている人にとっては、「コメの価格」っていうのは、そんなに関係ないんですよね。
タイも物価が上がっていますから、よっぽどの大農場でない限りは、
コメだけで一家を養って、子供を大学に入れられる、というような家庭は、おそらく、ほんの一握りではないかと思います。
子供を大学に入れている農家というのは、コメ以外にも、何らかの商品作物を植えていたり、家族の誰かが出稼ぎに行っていたり、と、別の収入手段を持っているケースがほとんどです。
つまり、コメの価格が家計を左右する、という農家自体が、タイでは年々減っている、ということです。
にもかかわらず、コメ農家に対しては、事あるごとに、補助金が出されます。
また、タイの庶民のほとんどは、身の丈以上の借金をしていますから、
補助金をもらったところで、それは借金の返済に充てられるだけです。
そもそも、日当300バーツの国で、補助金が千バーツ単位というのは、
はっきり言って、ケタが違いすぎます。
「コメを植えるよりも、外で働くよりも、補助金を待っていた方がトクをする」
という考えを、農家に植え付けてしまいます。
私が危惧しているのは、国民が現金に依存をし過ぎてしまうと、ある日突然、現金の流れがストップしてしまった時に、生存できなくなることです。
現在のタイのインフレは、すでにぎりぎりのラインで、これ以上インフレが進むと、多くの家庭で、ライフラインが維持できなくなります。
「物価が上がったから補助金で助ける」
というやり方をやってしまうと、流通する紙幣の枚数が増えるだけですから、ライフラインそのものは、何も改善されません。
やはり、お金があろうがなかろうが、
最低限、「一家が1年間食えるだけのコメと野菜は各自で確保する」という状態を、
維持しておく必要があると思っています。