タイの少数民族伝統の育児スタイル~子供に大人を敬うことを教える最もシンプルな方法とは

子供が小さいうちから、「年功序列」の概念、つまり、年長者や先輩を敬うことを教えておくのは、非常に重要です。

個人主義が進んで、社会がどれほどグローバルになっても、

「年少者が年長者を敬う」

というのは、人間社会の最低限のルールだからです。

今回ご紹介するのは、「子供に年功序列を教える最もシンプルで効果的な方法」

に関連した、ちょっと興味深いお話です。

村の子供のお誕生日会

タイの山の子供たちは、誕生日パーティーと、お誕生日ケーキが大好きです。

うちに毎年来てくださるゲストの方で、

「タイに来た時に、村で誕生日が近い子のために、誕生パーティーをする」

というのを恒例にしてくれている、Nさんという人がいます。

先日来ていただいた時も、ちょうど、うちの次女の誕生日にあたり、Nさんは次女のために、誕生パーティーをしてくださいました。

ケーキは8切れ

この日は、誕生パーティー用に、子供用のケーキと、大人用のケーキ、それぞれ1つずつ買いました。

子供用のケーキは、正直、「ケーキの形をしていれば何でもいい」ので、適当に選びました。(笑)

一方、大人用のケーキは、やはり、自分たちがお金を出して食べるものですから、

ある程度厳選して、少しだけ高価なものを買いました。

そして、子供用のケーキを「8等分」し、「7人」の子がやってきました。

8切れのケーキを7人の子供に配ると、当然、ケーキは1切れ余ります。

まぁ、ここまでは、良かったんですが…

その後、遅れて、2人の子がやってきました。

大人たちの表情が一瞬凍りついたのは、言うまでもありません。

「子供用のケーキは、残り1切れしかない。でも、2人の子供が来てしまった。さぁどうしよう」

というシチュエーションです。

大人と子供の食事を分ける

日本なら、

「じゃあ、大人用のケーキを、子供に1つあげればいいじゃない」

という人もいるかもしれません。

しかし、ここはタイです。

しかも、昔ながらの伝統が色濃く残る、少数民族の村です。

「大人のものを、子供にあげる」というのは、ルール違反になります。

伝統的なアカ族の村では、大人の食卓には子供を呼びません。

大人が一通り食べ終わってから、その残りを、子供が食べます。

序列を教えることの大切さ

ここですぐに、

「そんなの、子供がかわいそう!!」

と、考えてしまうのは、あくまでも、先進国の価値観です。

大人と子供の食卓や食事を分けることで、子供には「序列」を教えることができます。

「大人は、子どもよりも偉い」

というのは、子供が学ぶべき、最も基本的な「社会のルール」です。

こうした年功序列が、小さい頃から身に付いているからこそ…

「弟妹は兄姉を敬い、後輩は先輩を敬い、若者は高齢者を敬う」

ということが、自然にできるようになります。

親を尊敬できない子供は…

現に、世の中の非行や少年犯罪の多くは、

「年功序列が分かっていない子供によって、引き起こされる」

という一面もあります。

上下関係を教えられず、自由奔放に育ち過ぎてしまったがために、行動にブレーキが効かなくなってしまうんです。

また、少年犯罪とまでいかなくとも…

子どもが親を自分の「召使い」であるかのように考えて、親を敬わず、親をバカにして、ないがしろにしてしまうのは、

やはり、家庭内での「上下関係」がきちんと身に付いていないからです。

そのため、小さいころから、こうした上下関係を子供に教えるのは、非常に重要です。

上下関係を徹底させる

伝統的なアカ族の村では、親と子の上下関係は、かなり徹底されています。

そのため、親が子に気を使う、なんてことは、「あり得ません」。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、我が家でも、年功序列のルールは徹底していますから、

「大人用のケーキを子供に食べさせる」

という選択肢自体が、そもそもあり得ない…ってことなんです。

また、「遅れてきた子供が、大人用のおいしいケーキを食べる」という前例を作ってしまうと…

次回から、子供たちは、時間通りに集まってきてくれなくなります。

「遅れてきたほうが得をする」

という考えを、子供に植え付けてしまうからです。

アカ族の奥さんのシンプルな解決法

以上を踏まえた上で、

「ケーキは残り1切れ。でも、子供は2人やってきた」

という状況では、一体、どのようにすれば良いのでしょうか。

私を始め、日本人のゲストも、

「一体、この場をどうやって乗り切るんだろう…」

と、固唾を飲んで、状況を見つめていました。

ここで、アカ族のお母さんの取った解決策は、実に単純明快でした。

お母さんは、迷うことなく…

残った1切れのケーキを、半分に切りました。

そして、遅れてきた2人の子供たちに対し、「半分ずつ食べなさい」と言って、

8分の1のさらに半分、16分の1のケーキを、2人の子に渡しました。

この対応に、日本人2人は、拍手喝采。

問題は、すべて解決しました。

「なるほど、そうするのか」

と、まさに目からウロコでした。

一件落着!?

残ったケーキを半分にする、という方法なら…

「子供は子供用を食べる」というルールも守られますし、

「遅れてきた子は満額もらえない」というペナルティーを与えることもできますから、一石二鳥です。

また、もしも遅れてきた子が3人、4人と増えても、同じことです。

残った物を、3等分、4等分にして、1人当たりの取り分を減らすことで、いくらでも対応が可能です。

不満なら、「ケーキを食べなければいい」だけのことですから。

まとめ

ひょっとしたら、これをお読みになっている人のなかには、

「えっ、拍手喝采って…たぶん、私も同じように、残りを2等分するけどなぁ」

と、思っている人もいるかもしれません。

その人は、アカ族向きです。(笑)

しかし少なくとも、私はその時点で、

「1人分のケーキを、さらに半分にする」

という発想が、全くありませんでした。

真横には、大人用のケーキがありますから、どうしても、

「大人用のケーキをどうするか」

という考えが、頭から離れなかったんですね。

でも、うちのお母さんは、ハナッから、

「大人用のケーキをどうこうする」

という発想自体がなかったので、非常に斬新だと思って、感動した次第です。

…とまあ、このようにして、

我がアカ族村の年功序列は、日々維持されている…というわけです。

(つづく)