近年タイでは、「アグリツーリズム」というのが流行っています。
「アグリツーリズム」とは、「アグリカルチャー(農業)」と「ツーリズム(観光)」とを組み合わせた造語で、要は、「農業をやっている場所を、観光地にしてしまおう」という趣向です。
以前本誌でご紹介した、『タートーンのミカン農園』などは、その典型例です。
観光客は、ミカン農園を観光しながら、ミカンを試食して、おみやげにミカンを買う…こうした旅のスタイルが、タイ人旅行者の間で普及することで、生産者は、農業生産以外での収入を図ることが可能になります。
いわば、新たなビジネスモデルとして、近年つとに注目されている、観光地の形態なんです。
今回ご紹介する「チュイフォン茶園」も、茶畑がそのまま観光地になっていて、連日多くの観光客が訪れています。
アグリツーリズムが流行しつつあるタイで、うまく時流に乗って集客し、堂々たる観光地化を達成した、成功例の1つだと言えます。
「茶畑を観光地にする」…言うは易しいですが、茶畑に、茶屋などのお店を出して収入を得る、というのは、一筋縄ではいきません。
やはり、「そこへ行ってみたい!」と思わせるような特別な「何か」がないと、
ただ「農園」としてプロモーションをしたからといって、お客さんが来てくれるわけではないんです。
では、噂の「チュイフォン茶園」は、一体どのようにして、「ただの農場」から、北タイ有数の観光地の座を獲得していったのか…
今回は、そんな「チュイフォン茶園」の秘密と魅力に、迫ってみたいと思います。
チュイフォン茶園ってどんなところ?
チュイフォン茶園が設立されたのは、1977年。
つい最近有名になった感がありますが、実はすでに40年以上の歴史を持つ、老舗の茶園なんです。茶園の創業者は、中華系のタウィー氏。彼がメーファールアン郡の広大な山地にお茶を植えたのが始まりで、現在は、2代目のスビン氏が経営を担っています。
観光地として有名になっている今回の茶園以外にも、メーファールアン郡にも茶園を有していて、こちらも観光が可能です。
茶園の総面積は700ライ(約1km四方)、かなり広大な敷地です。
歴史はなんと40年以上?
2代目のスビンさんは、なんとまだ37歳の若手経営者。
大学で経営を学んだ後、30歳の頃から本格的に経営に携わり、新館のデザインなどにも積極的にかかわっていました。
畑が有名になってきた時期とも一致していますから、2代目でかなり大きく発展したケースだと言えるでしょう。
初代のタウィー氏がなくなると、スビン氏は満を持して、茶園の2代目に襲名しました。
なお、「チュイフォン」は、漢字では、「翠峰」と書きます。
日本語で読んでも「すいほう」から、チュイフォン茶園ともかなり似ていますよね!
ここのチュイフォン茶園は、農薬を一切使用しない、完全オーガニック農法を売りにしており、チュイフォン茶園で収穫された茶葉は、台湾を始め、日本ヨーロッパなどにも輸出されています。
また、堆肥も農家が自分で作ったものを使用し、乾季の乾燥に耐えるために、農園内では貯水池なども全て管理が徹底しています。
そして、このチュイフォン茶園ではもう一つ、近代的な経営手法が取られています。
それは、「学生アルバイト」の確保です。
学生が夏休みなる時期に一斉に求人をして1日150人以上の学生を雇っています。
また、こうした学生の中から、将来の職員が誕生することもあり、労働力の確保、ノウハウの確保、という意味でも、非常に先進的な手法をとっているんです。
チュイフォン茶園はなぜ有名になの?
40年前の設立当時は、チェンラーイ県内の山岳地によくある、プランテーション用の、いわゆる「普通の」茶園でした。
このチュイフォン茶園が、タイ人旅行者の間で急速な有名になり始めたのは、2,012年前後。ちょうど、タイ国民にスマホとフェイスブックが、一斉に普及し始めた頃です。
この頃から、タイ国民にとっては、「国内旅行に行って、その情報と自撮り写真を、フェイスブックにアップする」というのが、旅行の定番のスタイルとなっていきました。
こうした動きのなか、国道から車でわずか5分の好立地を誇るチュイフォン茶園は、タイ人旅行者たちに、次第に知られるようになっていったんです。
3チャンネルでは、このチュイフォン茶園がテレビドラマの撮影の舞台として使用されたり…と、
こうした広報活動が功を奏し、茶園は一躍、タイ全国で有名になりました。
こうしてチュイフォン茶園は、今やチェンラーイ県屈指の観光地として、不動の地位を得て、現在に至っています。
このチュイフォン茶園、見どころは多いんですが、大きく2つのポイントが挙げられます。それは…
「まるで渋谷や原宿のようなおしゃれなカフェ」
「材料にお茶を混ぜた抹茶色のチーズケーキ」
…この2点です。
詳しくは後述しますが、これら2つのポイントは、いずれも、今まさに「背伸びをしたい!」という上昇願望で頭がいっぱいの、現代タイの中産階級たちのニーズに、完全に合致していますよね。
これらが、チュイフォン茶園が急速に有名になった理由だと考えられます。
園内には喫茶店が2軒ある
では早速、茶園の概要について、ざっくり見ていきましょう。
園内の移動には、車かバイクが必須です。何せ、40度近い勾配の坂が園内に数ヶ所あり、徒歩で移動していたら、お茶屋さんにたどり着くまでに、疲れ果ててしまいます。
そのため、チュイフォン茶園を訪れる際には、自分の交通手段を用意しておくようにしましょう。
茶園の敷地に入って、丘を越えると、まず始めにレストラン兼喫茶店のようなお店があります。
ここにはお茶っ葉のサラダなど、独自の軽食メニューがありますので、食事をとることも可能です。初めての人は、ここで「じゃあちょっとお茶でも…」と言って、腰を下ろしてしまうのですが、ここはあえて我慢して、もう少し奥へ進んでみましょう。
なぜなら、メインの見どころは、奥にある、もう1軒の「近代的な」喫茶店の方だからです。
1軒目と2軒目とでは、店に置かれているメニューはほとんど同じなんですが、2軒目の方が圧倒的に流行っています。
1軒目のレストランも、十分綺麗な作りであるにも関わらず、あまりお客さんは入っていません。ほとんどが、2軒目の方へ流れていきます。そのためリピーターはみな、1軒目をスルーして、2軒目へ直行します。
「だったらいっそのこと、1軒目は喫茶店以外のコンセプトにしたほうがいいんじゃね?」って思いますよね。
私もそう思います。おそらく、今はまだ他に売るものが無いんでしょう。今後の1軒目の発展に、ぜひ期待しましょう。
抹茶風味のチーズケーキが絶品な件
冒頭にお話しした通り、この喫茶店のイチオシメニューは、「抹茶風味のチーズケーキ」です。
今回、日本からのお客さんと一緒に、大人4人で3種類のケーキを1個ずつ注文し、全員がひと口ずつ食べる、という不思議な光景の試食会を行ないました。
おすすめは、「抹茶チーズケーキ」と「抹茶ロールケーキ」ですが、日本のケーキ屋さんのものと比べても、遜色ないレベルです。
ケーキは1つ110バーツ。タイの一般の喫茶店レベルから見ると、かなりの高額ですが、「抹茶ケーキは、ここでしか食べられない!」ということで、多くのファンに愛されています。
お次は、ドリンクです。産地直送の「ホット烏龍茶」も捨てがたいですが、甘党としてはやはり、抹茶ミルクを注文しておきたいところです。抹茶ミルクと抹茶チーズケーキの相性は抜群で、女子だけでなく、今流行りの「甘党男児」にも、確実に受けるメニューです。
まとめ
いかがでしたか。今回は、ミャンマー国境手前の郊外エリアにある、2ヶ所の隠れ家的名店、
●チュイフォン茶園のおしゃれなカフェ
●エビの養殖レストラン
の2店を、ご紹介してきました。
メーサイ・国境方面へご旅行の際は、ぜひ、参考になさってみてください!