2018年6月18日、タイで、9年ぶりとなる「死刑」が執行されました。
死刑となった男は、当時17歳の少年を惨殺した罪で、死刑が確定しており、
致死薬物の注射によって、執行されました。
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……と、こういうことがあると、
普通は、「死刑反対!」という声が出そうなもんですよね。
しかし、そこはやはり、「アメージング・タイランド」です。
なんと、この直後に行なわれた世論調査では、
「死刑賛成!」
が、圧倒的多数を占めたんです。
日本人の感覚からすると、ちょっと意外な展開ですよね。
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では、そのニュースを、以下に引用してみます。
6月21、22日、タイ国立開発行政研究院(NIDA)は、18歳以上のタイ人を対象に、死刑制度に関する世論調査を実施。
「死刑を存続すべき」との回答が、前回の87%を5ポイント上回る、92.5%となった。
「死刑を適用すべき犯罪」としては、「強姦殺人」を挙げた人が最も多く、54.5%。
次いで「重大犯罪の再犯」が24%、「殺人」が17.7%だった。
けっこう、すごい数字ですよね。
「死刑賛成!」が、過半数とかじゃなくて、「90%」という世界です。
これはつまり、タイではほとんどの人が、
「凶悪殺人犯なら、死刑で当然っ!」
という風に考えている、ということです。
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先日、「忖度は日本人独特」の記事を紹介し、
その際、「タイの人は、日本人とは基本的に発想が違う」ということを書いたんですが、
今回の「死刑賛成」も、これとよく似ています。
どう似ているかというと…
タイの人は基本、「悪人は絶対に更生できない」という発想をします。
「幸せ者は一生幸せで、不幸な者はずっと不幸。人間の努力では、何ともできない」
という、「あきらめ」のような考え方が、タイの一般国民にはあります。
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タイ人が考える「死刑賛成」というのも、根本には「あきらめ」があります。
つまり、
「凶悪犯として生まれてきた人間が、更生できるわけがない」
という世論である、ということに他なりません。
日本だと、こういうとき、
「死刑にせず、更生させるべきだ!」という意見が、必ず出ますよね。
でも、タイには、そんな発想はありません。
「更生できるくらいなら、凶悪殺人犯になんて、ならないでしょ?」
ってなもんです。
実際のところ、「死刑にせず、更生させるべきだ」と言っている日本人が、
一体どれくらい、「更生の可能性がある」と真剣に考えているのかは、甚だ疑問です。
今回死刑になった男も、被害者を刃物で何十回とメッタ刺しにしたそうです。
タイ人は、それを知ったうえで、
「そんな極悪人の更生は、不可能である」
と考え、死刑に賛成している、ってことです。
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これまた、賛否両論はあるでしょうが、
日本人が見習うべき点も、あると思います。
なぜなら、死刑のメリットの1つに、「再犯の完全防止」というのがあるからです。
というのがタイ人の発想で、これはこれで、一理も二理もあります。
タイにおいては、「更生の可能性ゼロ」という考えが普通ですから、
「当然再犯する」⇒「死刑すべき」
というわけです。
それに、
終身刑にしてしまうと、死刑囚が死ぬまでの生活費を、国民の税金で、負担しなければなりません。
そう考えると、死刑という制度にも、十分なメリットがあるわけです。
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そもそも、
タイでは、「万人は生まれながらに平等」という考え方をしません。
タイ人にとって、
人間は「生まれながらに不平等」ですから、極悪人は、人間以下の存在です。
だったら、命の重さも、平等ではないわけです。
タイにおいては、
「一般の人間」と、「凶悪犯罪者(=人間以下)」とでは、当然、生きる価値も違います。
なので、「死刑も賛成」というわけです。
まあ、この話には、特に結論なんてものはなく…
私も、「賛成/反対」という個人的な意見を、ここに書くつもりはありません。
「世論で93%が死刑に賛成している国は、どういう発想が根底にあるのか」
というのを、ご紹介した次第です。