タイの少数民族の子供たちに【中国語】を毎日勉強させる意味はあるのか①

5月、タイは新学期になり、子供たちも長過ぎる夏休みを終え、学校へ通うようになりました。

この時期、我が家では、毎年必ずと言っていいほど、揉めていることが1つあります。

それは、

「子供を中国語塾に通わせるか、否か」です。

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うちの地区には、台湾の支援によって建てられた、「中国語塾」というものが存在します。

これは、「勉強の機会のない山の子供たちに、中国語を勉強してもらおう」という意図で設立されたもので、

山の子供たちは、授業料無料ではないものの、かなり格安の値段で、この塾に通って、中国語を勉強することができます。

……と、ここまで聞くと、「だったら、結構良いんじゃないの?」と思えそうなんですが、

ところが、そうでもないんです。

問題点は、3つあります。

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1つ目は、この塾が、「中国語習得講座」みたいな、ちゃんとしたコースを勉強しているわけではなく、

「みんなで、中国語に触れながら、お勉強しましょうね♪」

という風な、どちらかというと、「お遊戯会」のような雰囲気だからです。

もちろん、やる気のある子はそれでも上達しますが、

山では、「家では勉強したことがない」という子供が大多数です。

こうなると、中国語塾に通ったからといって、ほとんどの子は、中国語を話せるようにはなりません。

「ただ通っているだけ」という状態になりがちです。

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2つ目の問題は、ほとんどの子が上達していないにもかかわらず、

かなり長時間、拘束されてしまう点です。

平日は、毎日16時半から18時まで。

そして、土曜日はなんと、お弁当持参で、早朝から夕方まであります。

「長すぎっ」と思いますよね。

ここまで拘束されると、子供たちは、「家の手伝い」ができなくなくなってしまいます。

平日は、帰宅したらもへとへとで、

食事とシャワーを済ませたら、もうそれで1日が終わりです。

土曜に至っては、本来であれば、家で畑仕事などの重要な用事があるにも関わらず、

すべてを放棄して、中国語塾に拘束されます。

つまり、子供たちは、「中国語が忙しいから」というのを理由に、

ますます家の手伝いをしなくなっていくんです。

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そして、3つめの問題は、

子供の時間と体力を、中国語に奪われてしまうために、

子供たちは、小学校の勉強の予習・復習・課題などをする時間がなくなる、という点です。

そして、結果的に、「タイ語も中国語もどちらも中途半端」という、非常に残念な状態になってしまいがちなんです。

そのため、子供によっては、中国語塾でも落第、学校でも落第、という、笑えない状況が生まれています。

例えば、

うちの長男はわりと成績が良く、学校対抗の発表会などにもよく参加しているのですが、

これは、長男が中国語塾に通っておらず、放課後の時間が空いているからです。

そのため、長男は、学校の勉強や活動にも思う存分取り組むことができ、教師や他の生徒からも、より信頼を得られる、という好循環です。

でも、中国語塾に通っている子は、そうした学校での活動が、ほとんどできません。

タイ人の先生は、「ああ、あの子は中国語塾に通ってるから…」と、ある程度事情を察しています。

ちょっと意地悪な言い方をすると、中国語塾に通っている子供たちの多くは…

「家のことも、学校の勉強も、課外活動も、語学の塾も、すべてが中途半端」になってしまっているんです。

だったら、勉強や語学ができなくても、家事や課外活動がちゃんとできる子を育てる方が、よっぽど価値的だと思いませんか?

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まとめると、タイの山岳地における、中国語塾の、現状の問題点は、3つです。

●そもそも勉強に向いていない子が多く、ほとんどの子は大して習得できない。

●子供が、中国語の勉強が忙しいことを理由に、家事をやらなくなる。

●学校の勉強や課題、課題活動など、多くのことが犠牲になる。

以上の問題点から、我が家では、子供たちに「中国語塾には通わなくても良い」と言っています。

私は台湾と台湾人が大好きなんですが、しかし、この点だけは、譲れません。

これまでお話ししてきたように、中国語塾によって、失うものが大きいからです。

中国語の知識が必要な時には、私が直接教えていますから、

わざわざ貴重な時間を割いてまで、一日中通い続ける必要なんてありません。

そもそも、子供たちには、元気に野原を駆け回って、家では、家事の手伝いや、小さい子の世話をして欲しいと思っています。

それらは、語学の勉強なんかよりも、よっぽど重要なスキルだと思うからです。