5月、タイは新学期になり、子供たちも長過ぎる夏休みを終え、学校へ通うようになりました。
この時期、我が家では、毎年必ずと言っていいほど、揉めていることが1つあります。
それは、
「子供を中国語塾に通わせるか、否か」です。
■ ■ ■
うちの地区には、台湾の支援によって建てられた、「中国語塾」というものが存在します。
これは、「勉強の機会のない山の子供たちに、中国語を勉強してもらおう」という意図で設立されたもので、
山の子供たちは、授業料無料ではないものの、かなり格安の値段で、この塾に通って、中国語を勉強することができます。
……と、ここまで聞くと、「だったら、結構良いんじゃないの?」と思えそうなんですが、
ところが、そうでもないんです。
問題点は、3つあります。
■ ■ ■
1つ目は、この塾が、「中国語習得講座」みたいな、ちゃんとしたコースを勉強しているわけではなく、
「みんなで、中国語に触れながら、お勉強しましょうね♪」
という風な、どちらかというと、「お遊戯会」のような雰囲気だからです。
もちろん、やる気のある子はそれでも上達しますが、
山では、「家では勉強したことがない」という子供が大多数です。
こうなると、中国語塾に通ったからといって、ほとんどの子は、中国語を話せるようにはなりません。
「ただ通っているだけ」という状態になりがちです。
■ ■ ■
2つ目の問題は、ほとんどの子が上達していないにもかかわらず、
かなり長時間、拘束されてしまう点です。
平日は、毎日16時半から18時まで。
そして、土曜日はなんと、お弁当持参で、早朝から夕方まであります。
「長すぎっ」と思いますよね。
ここまで拘束されると、子供たちは、「家の手伝い」ができなくなくなってしまいます。
平日は、帰宅したらもへとへとで、
食事とシャワーを済ませたら、もうそれで1日が終わりです。
土曜に至っては、本来であれば、家で畑仕事などの重要な用事があるにも関わらず、
すべてを放棄して、中国語塾に拘束されます。
つまり、子供たちは、「中国語が忙しいから」というのを理由に、
ますます家の手伝いをしなくなっていくんです。
■ ■ ■
そして、3つめの問題は、
子供の時間と体力を、中国語に奪われてしまうために、
子供たちは、小学校の勉強の予習・復習・課題などをする時間がなくなる、という点です。
そして、結果的に、「タイ語も中国語もどちらも中途半端」という、非常に残念な状態になってしまいがちなんです。
そのため、子供によっては、中国語塾でも落第、学校でも落第、という、笑えない状況が生まれています。
例えば、
うちの長男はわりと成績が良く、学校対抗の発表会などにもよく参加しているのですが、
これは、長男が中国語塾に通っておらず、放課後の時間が空いているからです。
そのため、長男は、学校の勉強や活動にも思う存分取り組むことができ、教師や他の生徒からも、より信頼を得られる、という好循環です。
でも、中国語塾に通っている子は、そうした学校での活動が、ほとんどできません。
タイ人の先生は、「ああ、あの子は中国語塾に通ってるから…」と、ある程度事情を察しています。
ちょっと意地悪な言い方をすると、中国語塾に通っている子供たちの多くは…
「家のことも、学校の勉強も、課外活動も、語学の塾も、すべてが中途半端」になってしまっているんです。
だったら、勉強や語学ができなくても、家事や課外活動がちゃんとできる子を育てる方が、よっぽど価値的だと思いませんか?
■ ■ ■
まとめると、タイの山岳地における、中国語塾の、現状の問題点は、3つです。
●子供が、中国語の勉強が忙しいことを理由に、家事をやらなくなる。
●学校の勉強や課題、課題活動など、多くのことが犠牲になる。
以上の問題点から、我が家では、子供たちに「中国語塾には通わなくても良い」と言っています。
私は台湾と台湾人が大好きなんですが、しかし、この点だけは、譲れません。
これまでお話ししてきたように、中国語塾によって、失うものが大きいからです。
中国語の知識が必要な時には、私が直接教えていますから、
わざわざ貴重な時間を割いてまで、一日中通い続ける必要なんてありません。
そもそも、子供たちには、元気に野原を駆け回って、家では、家事の手伝いや、小さい子の世話をして欲しいと思っています。
それらは、語学の勉強なんかよりも、よっぽど重要なスキルだと思うからです。