2018年春、食用油(パームオイル)が、タイの街角の商店や小売店で、値下がり傾向にあります。
旅行で来ている方には、あまり関係のないニュースかもしれませんが、
在住者にとっては、食用油は毎日使うものですから、結構重要です。
特に、タイ料理は、炒めものが多いので、食料油の値段というのは、
「死活問題」だと言っても、過言ではありません。
そこで今回は、
「なぜタイの小売店で、食用油(パームオイル)の値段が下がっているのか」
ということについて、お話ししていこうと思います。
タイの「生活保護カード」
今回のテーマは、複合的な要素がいろいろと絡み合っているので、
順を追って、お話ししていきます。
まず現在、タイには、「生活保護カード」というものがあります。
これは、いわば、日本の生活保護と同じようなものですが、最大の違いは、
「現金支給ではなく、買い物ができるカード」
ということです。
生活保護カードのシステム
このシステムを、解りやすく言うと…
・生活保護カードの対象者(一定の年収に満たない者)に対し、政府からカードが付与される。
・カードの中に、毎月一定額(300~500バーツ)が振り込まれる。現金ではない。
・受給者は、このカードを特定の商店に持って行けば、カード内の金額の分だけ、買い物ができる。
・支給額には有効期限があり、有効期限が過ぎると、カードの残高はゼロになる。
…というものです。
日本よりも進んでいる?
このシステム、結構「先進的」だと思いませんか?
生活保護の不正受給や、外国人の生活保護受給者が4万人を超えるなどの問題が出ている、我が国日本でも、ぜひ見習って欲しいシステムだと思います。
「生活保護の受給者に、現金なんて必要ない。
生存に必要な物資があればそれでいい。」
という、至極当たり前のことが、タイという国では、いち早く導入されている、というわけです。
庶民はまず油を買う
そして、
生活保護カードの受給者は、このカードを持って、「何を」買いに行くかというと…
これが、今回のテーマである、「食用油(パームオイル)」です。
「タイ人の日常生活で一番よく使って、一番単価が高いもの」
と言えば、それはやっぱり、「食用油」ってことなんです。
風が吹けば桶屋が儲かる?
すると、どうなるか。
受給者は、一般の商店で、わざわざ現金を使ってまで、食用油を買わなくなります。
こうして、生活保護カードが使用可のお店では、大量に食用油を取得するようになり、
受給者は、生活保護が受給される(カード内の残高が増える)たびに、商店で食用油を購入する…
という構図が出来上がります。
こうなると、一般の商店で、食用油の売り上げは、ガクンと落ちます。
でも、これでは商店も困るので、当然…
「消費者たちに、現金で食用油を買ってもらうには、一体どうすれば良いか」
と、考えますよね。
その結果として、
「全国の小売店で、軒並み食用油が値下がりする」
という現象になるわけです。
ちなみに、今回の記事のように、
「一見、因果関係がなさそうな2つの出来事に、因果関係を存在すること」
を、日本の諺では、
「風が吹けば桶屋が儲かる」
と、言います。
→意味はこちら
庶民は非常に助かる
色々と、ややこしいことになっていますが、たった1つ言えることは…
少なくとも、我々庶民にとっては、食用油が値下がりするのは、非常に嬉しい傾向である、
ということです。