最近、北タイの少数民族の人たちの世間話を聞いていると、
「○○さんが金(きん)の首飾りを買った」
「うちも、金を買っておきたい」
みたいな話題が、よく出てきます。
今回は、東南アジアにおける、「金(きん)」についてのお話です。
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どういうわけか、東南アジアの人は、金(きん)が大好きです。
「金は値崩れしないから、買った時と同じ値段で売れる」
というのがその根拠らしいのですが、
でも、金を買う際に、加工手数料がかかり、下取りの時には買取手数料がかかりますから、
そういうのを差し引くと、「確実に目減りします」。
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そう考えると、「値崩れしない」っていうのはただの言い訳で、
要は、「金(きん)を身に着けたい」という願望の現れなんだと思います。
これは、タイ人もミャンマー人も、
カンボジア人もベトナム人も、
この半島周辺の人たちは、みんなそうです。

そして、20年ぐらい前までは、
タイの山岳部で、「金(きん)」を身に着けている人なんて、いなかったんですが…
最近は、山岳民族であるアカ族の人たちも、タイ人や中国人たちとの関わりの中で、
この「金を身に着ける文化」というものを覚えました。
現在は山の人たちも、お金に余裕が出ると、せっせと金を買っています。
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でも、日本人の感覚からすると、
「やっぱり、現金で持っておけばよくね?」
「わざわざアクセサリーにする必要ある?」
と、思うわけです。
特に、海外のボランティア財団から支援を受けている家庭や、
子供からの仕送りで生活している老夫婦が金を買っていたりすると、
「え、じゃあもう支援なんて要らないんじゃないの?」
なんて思ってしまいます。
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日本の生活保護受給者が、パチンコに行っていると非難されるのと同じように…
東南アジアの「貧困世帯」と呼ばれる人が、金を身に付けているのは、
やっぱり「おかしい」と思うわけです。
以前、カレン族の難民キャンプの写真が日本のメディアで紹介された時、
「要支援のはずなのに、金のネックレスを付けているじゃないか!」
という意見が、日本でけっこう出ていました。
その時は、
「東南アジアの人は、現金が信用できないから、金を買っているのです」
という説明がされていたんですが、
でも、そんなのは、ただの言い訳で、
根本はやはり、自己顕示欲や、周囲に自慢したいという願望の現れから、金を身に着けているんだと思います。

先日も、タイで「金を付けまくった新婦」というニュースが出ていた。馬鹿馬鹿しすぎる…
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だって、本当に「金(きん)が必要」だと思うのなら、
ネックレスや指輪にしなくても、「金の延べ棒」でも良いわけですからね。
しかもそれなら、加工賃が要りません。
「貧しいから」という理由で、海外の財団や親戚から経済支援を受けている人が、
「余ったお金で金(きん)を買って、身に着ける」という文化は、
あまりにも、「矛盾に満ちている」と言わざるを得ません。
少なくとも、貧しい人が、なけなしの現金を金(きん)に替えて、
「子供の教育費がありません」なんて言って寄付金を募るのは、
「やっぱり、それっておかしいんじゃないの?」
と、思うわけです。