「アカ語なんて勉強して、何の得があるの?」と、考えていませんか。
今回は、アカ語をはじめ、タイ語やミャンマー語などの、いわゆる、「マイナーな言語」を習得するメリットについて、
少し掘り下げて考えてみたいと思います。
マイナー言語とはそもそもどういうことか
この問題を考えるにあたり、
そもそもマイナー言語とはどういうことなのか、
ということを考えてみないといけません。
ビルマ語はマイナーな言語か
たとえば、ビルマ語(ミャンマー語)を例にとって考えてみましょう。
日本では、ビルマ語というのは明確に「マイナー言語」という位置づけですが、
実はビルマ語は、けっしてマイナーな言語などではありません。
ビルマ語って何?
ビルマ語というのは、東南アジアにある、「ミャンマー」という国の国語です。
この国には、50以上の様々な民族が住んでいます。
その民族の1つが「ビルマ族」族で、ミャンマーの最大の多数派の民族です。
そのビルマ族が話している言語が、ビルマ語(=ミャンマー語)、というわけです。
6割しかいないのに、多数派?
実はミャンマーには、ビルマ語を母語としているビルマ族は、
人口のわずか6割ほどしかいないんです。
でも、国として公用語が必要である、ということで、
残り4割の少数民族たちも、公用語として、学校でビルマ語を勉強しています。
6割という数字が、どれほど少ないか。
「多数派が6割だけ」という状況を理解するために、
日本の学校で考えてみましょう。
これはいわば、日本の小学校のクラスで…
●その12人のなかには、白人も黒人もいて、たまに英語も使われる
●日本人がたったの18人でも、クラスの中では多数派だから、クラスでは日本語が公用語になっている
というような状況です。
この例で、白人同士は英語を使っていたとしても、クラスの中に限って言えば、英語はあまり通用しません。
クラスの公用語はあくまでも日本語、ということになります。
すごく特異な状況だと思いませんか?
これが、ミャンマーという国の、言語状況です。
ミャンマーでは、ビルマ語が最もメジャーな言語
つまり…
ミャンマーというエリアの中では、ビルマ語は、れっきとしたメジャー言語なんです。
私たちがビルマ語を「マイナーだ」というのは、あくまでも、
英語や中国語との比較に過ぎません。
マイナーと言われている言語でも、ある特定のエリアへ行けば、メジャーな言語になり得ます。
ミャンマーで使われているビルマ語が、その例です。
前置きが長くなりましたが…
●「私たちがマイナーだと考えている言語も、場所によっては、メジャーな言語となりうる」
ということが、お分かりいただけたかと思います。
アカ語は本当にマイナーな言語なのか
では本題です。
このサイトでご紹介している、「アカ語」。
これも、一般の認識で言えば、かなりのマイナー言語です。
日本では、「その名前すら知らない」という人がほとんどです。
日本人にとっては、タイ語でさえ、マイナーな言語なのに、
そのタイの中で、さらに一部のグループでしか使われていない言語であるアカ語は、まさに、
マイナー中のマイナー言語です。
しかし、「アカ族の世界へようこそ」の記事でもご紹介していますが、アカ族は、タイ国内に約10万人が住んでいると言われています。
10万人というと、結構な数字です。
タイの人口は、日本の約半分ですから、タイで10万人は、日本の20万人に相当します。
言うなれば、日本国内に、家で日本語を話していない集落の家族が、20万人もいるようなものです。
実際は10万人よりも多い
また、この数字はいわゆる、純系のアカ族の人口です。
アカ族の村に嫁いだ他民族の女性や、
あるいはその反対に、
私のように、アカ族の村に婿入りした男性又はその子供も、コミュニティー内の共通語として、
必然的に、家ではアカ語を話すようになります。
こうなると、北タイの集落によっては、アカ語はれっきとしたメジャー言語です。
タイ語が話せない層も相当数いる
チェンマイ・チェンライなどの地方都市で、義務教育制度が普及したのは、
ほんのつい最近。
20世紀の末あたりです。
今からわずか2、30年前の話ですから、その当時に就学年齢でなかった世代、1970年代以前生まれの人は、
今でも十分なタイ語話すことができません。
こうなると、タイ語が共通語である、という認識も、若干クエスチョンマークです。
タイ語は、タイにおける共通語であるように見えて、
実は、エリアによっては、そこまで浸透していない言語なんです。
そうしたエリアでは、タイ語よりもむしろ、民族の言葉が日常的に話されている、という現実があります。
アカ族の村ではアカ語が共通語
要するに、アカ族のコミュニティー内では、タイ語でも中国語でもなく、アカ語が共通語であり、
当然のことですが、アカ語を話すのが最も通じやすいです。
そのため、私のように、アカ族の村に住んでいる外国人であれば、
タイ語よりもむしろアカ語のほうが、生活に密着したメジャーな言語、ということになります。
まとめ
以上をまとめると…
ある言語がメジャーかマイナーかというのは、あくまでも、相対的な評価に過ぎません。
英語が仮に世界の共通語だと言われていたとしても、
英語が通じない地域へ行けば、当然のことながら、英語は共通語ではありません。
反対に、アカ語のようなマイナーな言語であっても、
アカ族の集落へ行けば、そのエリア全体の共通語となります。
そのように考えると、
「メジャーかマイナーか」というのは…
その人が生活するエリア次第である、ということができます。
もしもあなたが、アカ族の村を訪れて、アカ族の人たちと交流を続けていくなら…
彼らの言語であるアカ語は、あなたが当然習得すべき必須スキルである、ということになります。
ある言語が、「メジャーかマイナーか」という評価は、あくまでも、相対的なものだからです。