タイで、「ゴミの収集が有料になった」
というニュースを、ご存知でしょうか。
現在、タイでもゴミ問題が年々深刻化していて、特に、地方での『不法投棄』は、目を見張るものがあります。
政府では、こうした風潮を受けて…
・ただし、そのための経費は、住民たちが払ってね
という、政策を打ち出しました。
それが、今回表題に掲げている、
『タイでごみ収集が有料化』
の、トピックです。
タイの地方と自治体が抱える3つの問題
~以下、地元新聞に掲載された記事から、翻訳・抜粋して、ご紹介していきます。~
このたび、関係省庁で正式に発表された収集料金は、
一般の家庭で、1世帯1ヶ月30バーツ、
業者など、ゴミの量が多い世帯は、従量制で40~70バーツとなっている。
問題1.行政は業者に丸投げ
「行政主導」ではなく、「民間のゴミ収集業者」に、すべての対応が任されている、という点である。
市役所はただ、住民に対して「料金の徴収を促す」という程度にとどまっており、
実際のトラブルなどに対し、役所はほとんど関与していない、という現実がある。
そのため、業者が充実している地区もある一方で、
地区の人口に比べて、地区内のゴミの量が業者のキャパシティーを超えているような地区もある。
こうなると、「収集が追いつかない」という自治体も、当然出てくる。
住民からは、
「ほとんど収集に来ないのに、なぜ月極め料金を払わなければならないのか」
という不満の声も、相次いでいる。
問題2.業者の裁量が大きすぎる
業者によっては、「黒色のゴミ袋でなければ収集しない」という指示を、「独自に」出しているところもあり、
この場合、住民は、「収集してもらうための袋」を買って、それにゴミを入れないと、収集してもらえない。
しかし、こうなると、「ゴミ袋を買うお金がない」というような貧困世帯では…
ゴミの収集料金と、ゴミ袋代が、「生活を圧迫する」という事態になる。
問題3.不法投棄が増える
「ゴミ料金を払うぐらいなら、不法投棄をする」と考える住民が現れることである。
業者の側も、森林などに不法投棄されているゴミを、「無料で」収集する義務がないため、
不法投棄のゴミは、森林に放置されたままになる。
そのため、今回の政策は、「不法投棄をより深刻化させるのではないか」という指摘もある。
タイのゴミ問題は、まだまだ問題が山積していると言える。
~訳文以上~
うちのアカ族の村でも…
このニュースは、うちのアカ族の村でも、少なからず影響がありました。
うちの村では、市役所の職員が徴収に来て、
1世帯につき、1ヶ月20バーツ。
それを年間で徴収し、240バーツずつを、一括で支払うよう、指示が出ました。
やっぱり「高い」と感じる
うちは9人家族ですので、「まぁそんなもんかな」と、納得もいくのですが…
老人夫婦だけの世帯や、独居世帯という家庭も結構あり、そうなると、新聞記事でも指摘されているとおり、
「ゴミの収集代が生活を圧迫する」という事態にもなるわけです。
それに、タイの「恵まれた」日当が300バーツであることを考えると…
240バーツという金額は、たとえ「年間料金」とは言え、ほぼ日当一日分。
地方の山村にとっては、けっこうな額です。
そうなると、新聞記事にも出ているとおり…
「料金なんて、払いたくねぇーよ。」
「山にポイ捨てして、何が悪いの?」
と、考える人が現れてしまうのも、当然といえば当然なんです。
生ゴミなんて無い
そもそも、アカ族の村にはこれまで、「生ゴミ」という概念は、ありませんでした。
生ゴミはすべて、「家畜のエサ」や「畑の肥料」になるからです。
また、燃やせるゴミは、「薪(マキ)」になりますし、そうなると…
ゴミは、「プラスチックだけ」ってことになります。
プラスチックゴミだけなら、村で全部をまとめたとしても、そこまでの量にはなりません。
そもそもゴミは少ない
でも、伝統的な生活を送っている60代以上のアカ族の人たちは…
生活必需品のほとんどを、竹や木を加工して、自分で調達しています。
「そもそもプラスチックゴミすら出たことがない」という、筋金入りの人もいますから、そうなると…
「えっ、ゴミ収集って何?」
ってなもんです。
まぁ、これはさすがに極端なケースですが、今回のニュースで、私たちが考えるべきは…
「ゴミ業者が、何をどうする」
というような、「方法論」だけにとどまるものではない、ということです。
啓蒙活動が必要
やはり、このブログでもたびたびお話ししているとおり、最も重要なのは、「啓蒙活動」です。
つまり、
「ゴミ収集が有料になったから、お金を払いなさい」
ではなく…
「有料になったのだから、できるだけ、ゴミが出ない工夫をしていきましょう」
という、草の根の啓蒙活動が、タイにも必要になってきたのだと思います。
まとめ
今回は、タイの「ゴミの収集有料化」のニュースと、現状の問題点について、ご紹介してきました。
そもそもタイには、「ゴミを分別する」という発想自体がありません。
ですので、収集うんぬんの前に、まずは、「分別」から教えていかなければなりません。
たとえば…
・燃えるゴミは、薪にしましょう。
・燃えないゴミだけ、水分を切って、5世帯1組で。専用の置き場に捨てるようにしましょう
というような呼びかけです。
こうした「分別」や「リサイクル」に関する知識が、タイで増えていけば…
タイのゴミの問題は、確実に、快方に向かっていくはずです。
「収集」の、具体的な問題なんて、むしろ、そのあとでもいいんです。
そして本当は、こういうことを、「海外の財団」に、もっと力を入れてほしいと思います。
わざわざ海外からタイにやってきて、財団を設立し、
「効果があるかどうかよく分からないようなこと」
に、貴重な寄付金とマンパワーをつぎ込むぐらいなら…
今回のゴミ問題のように、「確実に住民のためになって、効果があること」に、もっと資金とエネルギーを注いで欲しい、と考える次第であります。