【タイの言語】タイの少数民族の子供たちにとってタイ語はどういう位置づけなのか①

タイの少数民族の子供の多くは、バイリンガル(2ヶ国語話者)、トリリンガル(3ヶ国語話者)です。

今回は、このテーマについて、少しお話をしていこうと思います。

村の子供は何語をしゃべっているのか

うちに来てくれたゲストの方が、尋ねる内容の第1位は、

「子供たちは、家では何語をしゃべっているんですか?」

という質問です。

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まず、私の住むアカ族の村で言えば、

第一言語は、民族の言語であるアカ語です。

両親は家でアカ語を話していますから、

その子供も、当然、アカ語を話すようになります。

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そして、第2言語。

これは、タイに住んで、タイの小学校に通っていますから、

タイ語が、第2言語です。

こうして山の子供たちは、自動的にバイリンガルになっていきます。

なので、冒頭の質問は、ざっくり言うと、

「村の子供たちは、家ではアカ語を話し、学校ではタイ語を話している」

ってことになります。

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以上が、いわば基本ルールです。

しかし、この他に、

村ごとや、子供ごとの、個別のケースがあります。

よくあるのは、

子供が、家でアカ語をあんまり話さない、というケース。

「アカ族ではあるものの、学校でタイ語を話し、家でもタイ語を話している」

というケースが、実はけっこうあります。

タイに憧れる?

これにはいくつか理由がありますが、

最大の理由は、「タイへの憧れ」です。

つまり、子供たちの中には、

タイ族のことを、アカ族よりも「上」だと考えている子も少なからずいて、

「アカ語はダサい」
「タイ語はカッコいい」

みたいな認識がある、ということです。

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そういう子は、町や学校でアカ語を話すことを「恥ずかしい」と感じ、

反対に、タイ語を話していると、「1ランク上がった」ような感覚があります。

こうなると、タイ語を話す機会がどんどん増えていって、

結果として、アカ語をあんまり話さなくなるわけです。

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また、親の側も、同様です。

近年は、山にも「高学歴志向」というやつが入ってきて、

親は、
「タイ語がペラペラなほうが就職に有利」
「社会でワンランク上に上がれる」

という思いから、自らすすんで子供にタイ語で話しかける、というケースもあります。

こうなると、アカ族の家庭であっても、

子供は学校でタイ語を話し、

村へ帰ってきても友達とタイ語を話し、

なおかつ、親も家でタイ語を話している、

ってことになりますから、

生活の中でのアカ語の割合は、どんどん少なくなっていく…というわけです。

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…ただし、以上は、「極端なケース」です。

「タイへの憧れ」が度を過ぎてしまったり、タイ族の多いエリアに住んでいると、

アカ族の家庭でも、タイ語がメインになることもよくある、ということです。

うちの村は、まだアカ語の割合が多いほうですが、

それでも、子供同士であえてタイ語で会話するというケースもあります。

まとめると…

「基本、アカ族の家では、子供たちはアカ語を話しているが、

タイ語のウェイトは年々上がっていて、

村や家でもほとんどアカ語を話さない、という極端なケースもある」

ということになります。

(つづく)