タイの少数民族の子供の多くは、バイリンガル(2ヶ国語話者)、トリリンガル(3ヶ国語話者)です。
今回は、このテーマについて、少しお話をしていこうと思います。
村の子供は何語をしゃべっているのか
うちに来てくれたゲストの方が、尋ねる内容の第1位は、
「子供たちは、家では何語をしゃべっているんですか?」
という質問です。
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まず、私の住むアカ族の村で言えば、
第一言語は、民族の言語であるアカ語です。
両親は家でアカ語を話していますから、
その子供も、当然、アカ語を話すようになります。
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そして、第2言語。
これは、タイに住んで、タイの小学校に通っていますから、
タイ語が、第2言語です。
こうして山の子供たちは、自動的にバイリンガルになっていきます。
なので、冒頭の質問は、ざっくり言うと、
「村の子供たちは、家ではアカ語を話し、学校ではタイ語を話している」
ってことになります。
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以上が、いわば基本ルールです。
しかし、この他に、
村ごとや、子供ごとの、個別のケースがあります。
よくあるのは、
子供が、家でアカ語をあんまり話さない、というケース。
「アカ族ではあるものの、学校でタイ語を話し、家でもタイ語を話している」
というケースが、実はけっこうあります。
タイに憧れる?
これにはいくつか理由がありますが、
最大の理由は、「タイへの憧れ」です。
つまり、子供たちの中には、
タイ族のことを、アカ族よりも「上」だと考えている子も少なからずいて、
「アカ語はダサい」
「タイ語はカッコいい」
みたいな認識がある、ということです。
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そういう子は、町や学校でアカ語を話すことを「恥ずかしい」と感じ、
反対に、タイ語を話していると、「1ランク上がった」ような感覚があります。
こうなると、タイ語を話す機会がどんどん増えていって、
結果として、アカ語をあんまり話さなくなるわけです。
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また、親の側も、同様です。
近年は、山にも「高学歴志向」というやつが入ってきて、
親は、
「タイ語がペラペラなほうが就職に有利」
「社会でワンランク上に上がれる」
という思いから、自らすすんで子供にタイ語で話しかける、というケースもあります。
こうなると、アカ族の家庭であっても、
子供は学校でタイ語を話し、
村へ帰ってきても友達とタイ語を話し、
なおかつ、親も家でタイ語を話している、
ってことになりますから、
生活の中でのアカ語の割合は、どんどん少なくなっていく…というわけです。
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…ただし、以上は、「極端なケース」です。
「タイへの憧れ」が度を過ぎてしまったり、タイ族の多いエリアに住んでいると、
アカ族の家庭でも、タイ語がメインになることもよくある、ということです。
うちの村は、まだアカ語の割合が多いほうですが、
それでも、子供同士であえてタイ語で会話するというケースもあります。
まとめると…
「基本、アカ族の家では、子供たちはアカ語を話しているが、
タイ語のウェイトは年々上がっていて、
村や家でもほとんどアカ語を話さない、という極端なケースもある」
ということになります。
(つづく)