【タイ ボランティア③】少数民族の山村で、子供にも大人にも全員にメリットのある支援活動を考える【後編】

今回は、「理想のボランティアのあり方を考える」の第3回です。

これまで2回にわたって、
ボランティア活動における、

「再現性」
「継続性」

ということについて、お話をしてきました。

今回は、3つめの重要な要素である、ボランティア活動の「公益性」ということについて、ご紹介していきます!

公益性とは?

公益性というのは、読んで字のごとく、「みんなにメリットがある」という意味です。

「公益性の高いボランティア」として一番解りやすい例は…

井戸を掘ったり、
貯水タンクを作ったり、
荒れ地を開墾したり、

…などなど、要は、

その地域に住んでいる住民全員にメリットがあるような活動を指します。

そして、ボランティア活動に限らず、経済活動、創作活動など、あらゆる人間の活動は…

本来、この「公益性」というものが、最も重視されるべきです。

成功者ほど公益性を求める

実際のところ、

「一部の人間だけが得をすること」

というのは、長くは続きません。

社会全体で求められている事業だからこそ、私財をなげうってでも行なう価値があり…

また、多くの人の共感と協力が得られて、長く続いていくわけです。

そして、世の「成功者」と呼ばれる人達は、この事を知っているからこそ…

経済的な成功を収めたのち、必ずと言って良いほど、「慈善事業」に手を出すわけです。

では、「ボランティアの公益性」ということに話を戻しましょう。

貯水タンクが必要な理由

冒頭にも例示しましたが、「村の共同の貯水タンク」というのは、かなり公益性が高いです。

特に、少数民族の人たちが住んでいる山岳エリアというのは、もともと、上下水道があまり発達しておらず…

「水道をひねっても水が出ない」

ということが、よくあります。

こうなると、

「水が流れる時に貯めておいて、水が無い時にそれを使う」ための工夫が、どうしても必要ですから…

タイの僻地では、「貯水タンク」というものが、「必須」なんです。

村内にも格差がある

そのため、少数民族の村でも、村長クラスの人や、経済的に余裕のある世帯は、

「とりま貯水タンク」

という発想をして、自分の家庭の生活用水を、確保しようとします。

しかし、それ以外の、貧困層の人たちは、貯水タンクを作るお金もありませんから、そうなると…

住民全員が、近くの川へ「水をくみに行く」という作業が必要になります。

そのため、公共の貯水タンクが、村の中に「たった1つ」あるだけで…

村人は、日々の家事で使用する水を、心配する必要がなくなります。

一番必要な物なのに…

しかし、どういうわけか、私の見る限り…

「村に貯水タンクを作った海外の財団」というものを、あまり見たことがありません。

私が住んでいる山の中でも、

「2,3箇所、見かけたことがあるかな…」というレベルです。

貯水タンクがあれば、確実に、村人全員が喜ぶにもかかわらず…です。

見た目の派手さに欠ける?

これはおそらく、ちょっと意地悪な見方をすると…

「貯水タンクは、見た目が派手ではないから」

という理由が、推理可能です。

財団にしてみれば、よそさまからの寄付金を使って、何かを作る以上…

寄付者全員に対して「見栄えが良いこと」が求められるからです。

山でバスケットボール?

現に、うちの近所の村に、「バスケットボールのコート」と「サッカーのコート」を作った財団があります。

「山の貧しい子供たちが、元気に楽しく、バスケットボールをして、遊んでいる…」

見た目的には、かなり「絵」になりますよね。

すると財団は、「子供たちが元気にスポーツに興じている画像」を見せて…

寄付者たちに対し「活動の報告」をするわけです。

要は、見た目の印象が、「貯水タンク」よりも、「バスケットボールのコート」のほうが、きれいに見える…

ただ、それだけのことなんです。

(なお、ここでの話は、あくまでも、「貯水タンク」との比較で紹介しているだけですので、全国のバスケ部出身の皆さん、お気を悪くなさらないでくださいね!)

公益性はあるのか

でも、ちょっと考えてみれば分かりますが…

タイの山の子供たちは、バスケットボールなんていう「先進国のスポーツ」を、そもそも知りません。

また、空気入れなんて誰も持っていませんから、ボールの空気が抜けたら、もう終わりです。

新しいボールを買おうと思っても、タイの田舎で、バスケットボールなんて売っていません。

こうなると、ボールで遊ぶことができなくなり…

いつ使われているかも分からない、バスケットボールの「コートだけ」が、

閑散と、山の中に存在する…
ってことになります。

再利用は「不可」

しかも…

床を、コンクリートで固めてしまっていますから、これを剥がすのは大変です。

もしも、コンクリで固めずに、地面のままにしておけば…

村人全員が食べる分の野菜や穀物を、栽培できたかもしれないのに。

多くの人が勘違いをしている

「バスケットボールコート」のくだりが少々長くなってしまいましたが、要は…

「公益性」という視点が抜けていると、貴重な寄付金を使って、こういう「トンチンカン」なことをしてしまう…ということです。

誰が得をするのか

極端な話、バスケットボールコートを作って、喜ぶのは…

「スポーツマンのリア充男子」だけです。

村の人口比率で言えば、5パーセントにも満たない、わずかな比率です。

にもかかわらず、海外の財団は、バスケットボールコートを作り、写真を撮って、

「皆様の寄付のおかげで、こんなに素晴らしいものを作ることができました!」

なんて言って、紹介しているんです。

これは、一言で言えば…

「公益性」よりも、「見た目」が重視されてしまった結果だといえます。

重視されるべきは「公益性」

でも、バスケットボールコートを作るお金で…

貯水タンクを10台以上と、
水道管100世帯分を、
買うことができます。

どちらの方が公益性が高いか…

言うまでもありませんよね。

公益性の高い支援活動

「公益性」という観点から言えば、貯水タンクのほか…

・農作物の集積所、

・作物の苗の取扱所、

・小さな子の遊び場や遊具、

・職業訓練センター

・竹やぶの保護、

・自然林の保護

…等々、探せばいくらでもあります。

でも、これらはいずれも、あまり「絵」にならないんです。

要は、財団で「スタディツアー」などを行なったときに…

「きれいですねー、すごいですねぇ」って、言ってもらいにくいんです。

絵になるって、重要?

その点、バスケットボールコートなら、すぐに写真を撮ることができて…

「子供の青春の汗」
「子供の満面の笑み」

なんていうキャッピコピーを、いとも簡単に付けることができます。

タイのボランティア財団に限らず、多くの人が…

「寄付=絵になること」

という発想をしてしまいがちなのは、この辺に理由がありそうな気がします。

「少女への支援」が多い理由

また、「少女の写真」というのも、定番です。

仮に、「おっさんへの支援」と「少女への支援」の2種類があったら…

どっちのほうが寄付金を集めやすいと思いますか?

答えは、明らかです。

「おっさんの写真」を撮っても、「絵」になりませんよね。笑

実際のところ、こういう写真ほど「いいね!」が付きやすい

でも本来は、見た目うんぬんなんて、関係ないはずです。

しかし…

「少女は支援すべきだが、おっさんは自己責任」

こういう風潮があるのは、否めません。

でも、本当に困っているおっさんがいるなら…

そのおっさんを、全力で支援したって、構わないわけです。

それに、そのおっさんを救うことが、結果的に、その娘たちを救うことにも、繋がります。

見た目よりも実益

特に、現在はSNSが全盛ですから…

「ひと目見てキレイだと思えるもの」

というのが、ことのほか重視される風潮があります。

しかしそこには、「公益性」という観点が欠落しています。

でも、あなたは、ここまでお読みいただいて…

「住民全員が得をすること」という視点が最も重要である、

ということを、すでに十分、ご理解いただけているはずです。

極端な話、

「1千万円」をつぎ込んで、公益性の全くないものを作るよりも…

たとえ「1万円」でも、公益性の高いものを作る方が、はるかに値打ちがある

と、思いませんか?

まとめ

いかがでしたか。

これまで3回にわたって、「ボランティア活動」に必須の要素である、

・再現性
・継続性
・公益性

以上3つのポイントについて、ご紹介してきました。

しかし、現状の多くのボランティア財団では…

「活動の指針」のようなものを、始めに掲げてしまい、その活動の指針に沿って、寄付金を使う…

というようなところがあります。

でも、それって、完全に「運営者目線」で、現場の声は反映されていないわけですから…

「本末転倒」だと思いませんか?

むしろ、「寄付金を何に使うか」というのは、後から考えても、全然構わないと思います。

実際に少数民族の村に入ってみて…

・この村でもほかの村でも、同じような成果が期待できて(再現性)、

・その活動を、半永久的に続けることができて(継続性)、

・なおかつ、村人の過半数がそれによって利益を得る(公益性)

そういう活動ができれば、「理想」だと思うわけです。

3回続けてお読み頂き、ありがとうございました!

それではまた。

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