今回は、タイの少数民族の村の子供に、「稼ぐ方法」を身につけさせよう、というお話です。
子供達に、「お金を稼ぐ方法」を教えるのは、果たして、悪いことなのでしょうか?
「株式会社ごっこ」で遊ぶ
先日、村の子供たちと、「株式会社ごっこ」をして、遊びました。
「株式会社ごっこ」とは、実際の株式会社のように、村の子供たちがそれぞれお金を出しあって何かを作り、
それを他の村人に売る、という遊びです。
この日、子供たちが作ったのは、「ゼリーのお菓子」です。
ゼリーとは言っても、ジュースのシロップとゼリーの素を混ぜて作るだけの、簡単なものです。
そして、この材料を買うためのお金を、「仲間たちで出し合う」わけです。
でも、山村のアカ族の子供たちは、親からお小遣いなんて、当然もらっていませんから、
初期投資の分は、私が子供達に「貸す」という形になります。
もちろん、「貸し倒れになっても構わない」と思って貸します。
今回は、無事収益が出たので、ちゃんと返してもらうことができました。
それだけでも、すごいことです。
商売は成り立つ
ひょっとすると、ここまでお読みになって、
「えっ、ゼリーなんか作って、村で売れるの?」
と、感じたかもしれません。
でも、実は、田舎の山村では、「商店」の数が圧倒的に少なく、村人にとってはむしろ…
「買いたいものが何もない」という状態なんです。
ですので、子供が「おいしい」と感じて、安価であれば、基本的に、何でも売れるんです。
大成功!
手作りのゼリーは、めでたく全て完売しました。
子供たちが、初期投資として私から借りた分を、私に返済した後、残りを、みんなで山分けします。
今回、実験的にやってみたアクティビティーだったのですが、これはこれで
「なかなか面白いかも」って思いました。
子を稼げるようにする教育
アカ族の格言には、「稼げない子を育てる意味はない」という言葉があります。
そのため、伝統的なアカ族の社会では、
「将来子供が稼げるように、教育する」という教育観があります。
親は、こうした教育観を持って子供に接し、子供も、小さい頃から、おのずと「稼ぐこと」に関する関心が高くなります。
現在は、アカ族の村にも「学校制度」というものが導入され、「学校は勉強するところ」という発想が一般的になりましたが、
伝統的には、やはり「それをして稼げるのかどうか」という点が、重視されます。
そのため、高いお金を払って子供を学校に行かせるのも、「将来稼げるようになるため」という目的があります。
タイも「空洞化」が進む
今のところは、タイも好景気ですから、良い学校を出ていれば、そこそこ仕事はあります。
しかし、「学校卒業=稼げる」という図式が、タイでいつまで有効かは、疑問です。
タイも現在、ホワイトカラーが飽和していて、ブルーカラーは外国人労働者……
という、まるで極東のどこかの島国のような状態になってしまっています。
こうなると、「学校を出ても稼げない」ってことになりますから、当然、山の子供たちも…
「稼ぐための方法を勉強したほうがいい」
という発想になります。
そのため、実は、今回ご紹介している「株式会社ごっこ」は、私が提案したものではなく…
子供たちが、自発的に始めたものなんです。
実際のところ、山の子供達は、「何に使うのかよく分からない教科書の知識」なんかよりも…
「将来お金稼ぐための方法」に、強い関心があります。
それに、もしも、慈善財団が支援している山の子供達が、みな、「稼ぐ方法」を身につけることができれば…
「もう、何も支援しなくていい」ってことになりますよね。
そうなれば、全員がハッピーになれると思いませんか?
意外と真剣
今回の活動を通して感心したのは…
子供たちが「意外と真剣にものづくりをしていた」という点です。
そこはやはり、勤勉なアカ族のなせる技でしょう。
今回のゼリーを作る時も、
「どうすれば、もっと美味しく作れるのか」
「どうすれば、もっと原価を抑えられるのか」
ということを、子供たちが、みずから試行錯誤していました。
真のメリット
今回の「株式会社ごっこ」で、
「もうかった」とは言っても、もちろん、微々たるものです。
でも、こうした活動によるメリットは、単に「お金」だけで換算できるものではありません。
そこには、もの作りからスタートして…
売るための方法、サービス、原価計算、接客など、あらゆるスキルが、集約されていますから、
子供達にとっては、間違いなく「有益なこと」です。
また、何より…
「自分の手でこれだけ稼いだ」
という、自立心や自負心が育まれます。
ですので、私は今後、この活動は、コンスタントに続けていこうと考えています。
と、いうわけで、この「株式会社ごっこ」への協力者や、出資者を、募集したいと思います!
タイの田舎なら、ほんの数百バーツもあれば、どんなものでも、作って商売ができますから、「出資」と呼ぶほどのものでもありません。
それに、何に使われるかも分からない「寄付」にお金を出すくらいなら…
「このお金で、何か作って、売ってみ?」
と言って、お金を渡してあげたほうが、よっぽど、「価値のある使い方」ができると思いませんか?
もちろん、儲けが上がらなければ、当然返済はできませんし、
儲かっても、配当金なんてありませんから、「利息0%」でそのままお返しするだけです。
でも、「利益を出すための方法」や「ノウハウ」なども、協力者の日本人が、子供達と一緒になって考えていただければ、
これは、子供達にとって、貴重な人生経験になります。
また、こうした啓発が、本当の「自立支援」だと思うのです。
「タイの山村で株式会社ごっこ」
…関心のある方は、ぜひ、ご連絡をいただければと思います。