「アカ族には、独自の文字はあるのですか?」
「アカ語は、どんな文字を使っているのですか?」
これも、ゲストの方からよく聞かれる質問です。
これに対する回答としては…
●でも、西洋人宣教師が、聖書を教える目的で、アカ語をABCで表記する方法を発案し、ABC表記によるアカ語聖書を作成しました。
●それで現在も、アカ語は、ABCのアルファベットで表記することになっています。
というのが、一応の回答になります。
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でも、私はこのABC表記を、
「西洋人による、最大のおせっかいの1つ」
だと思っています。
理由は明確で、
表題にも書いた通り、このABC表記は、アカ族の間で、「ほとんど普及していない」からです。
そのため、圧倒的大多数のアカ族は、この表記を、読んだり書いたりできません。
若い人も、多少読めはするものの、「積極的にABCで書く」という人はかなり少数派です。
アカ・アルファベットの読み書きができるのは、一部の若者と、聖職者たちだけです。
では、アカ族の若者は、LINEやメールをどうやっているかというと、
「タイ語」で書いています。
仮に、アカ・アルファベットでLINEを書いたところで、
「相手が読めない確率の方が高いから」です。
だったら、相手が読めないかもしれないアカ・アルファベットではなく、
自分も相手も読めるタイ語で書いた方が、お互いラク、ということなんです。
本当、「無用の長物」とは、まさにこのことですよね。
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ABC表記のアカ・アルファベットが、なぜ、普及しないかと言うと…
東南アジアの人たちにとって、「ABC」というのは、身近な文字ではないからです。
西洋人が「良かれと思って」発案したABC表記は、
「ABCならすぐに読めるだろう」
というのが、前提になっています。
私たち日本人の感覚だと、
たとえば「LA」と書いてあったら、「ラ」と読む、ということが分かりますよね。
それは、私たち日本人にとって、ABCが身近な文字だからです。
でも、アカ族の、しかも1970年代以前生まれの人の多くは、ABCをそもそも知りません。
アカ族のその年代にとってみれば、
アカ・アルファベットを読むため「だけ」に、わざわざABCという異国の文字を、学び直さなくっちゃいけない、ってことなんです。
山の人たちには、当然、「ABCを覚えよう」なんていうモチベーションはありませんから、
結果的に、「アカ・アルファベット」は、一般にはほとんど使用されないわけです。
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だったらそんな文字、何のためにあるの?って思いませんか。
それなら、彼らにとって縁のないABCなんて使わず、いっそのこと…
「ミャンマー文字」
を使って、アカ語を表記したほうが、よっぽど普及していたと思います。
もしも仮に、西洋人が、無理やりABCなんて導入しなかったとしても…
いずれアカ族は、「ミャンマー文字で表記すれば良くね?」と、自分たちで気づいて、自分たちで導入した可能性が高いんです。
私が「アカ・アルファベットは、西洋人による最大のおせっかいの1つ」だというのは、これが理由です。
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たとえば、先ほどの、「LA」の例であれば…
「LA」と書いても、年配のアカ族は、ABCを知らないため、「ラ」とは読めません。
でも、ミャンマー文字で、「 လ 」と書けば、
少なくとも、ミャンマーに住んでいるアカ族は、「ラ」と読めます。
また、タイ在住のアカ族も、ミャンマーから移住してきた人が多いですから、
彼ら及び彼らの家族にとっては、英語の「LA」よりも、ミャンマー語の「 လ 」のほうが、よっぽど身近なんです。
その方が、初めから読める人がいるぶん、はるかに実用的だと思いませんか?
また、実際に、そういう表記法をしている少数民族もいます。
これに関しては、また次回…
(つづく)