うちの地元の北タイ山岳部の病院は、
毎日ものすごい数の人が訪れます。
しかし、医師の数が圧倒的に足りていないので、3時間4時間待ちは当たり前です。
「3時間待ちの3分診療」
でも、それだけ長時間待っても、医師はただ薬の処方箋を書くだけで、
日本でよく言われている「3時間待ちの3分診療」という状態が、こちらの病院にもあります。
2時間以上かけて病院に来ている人も多く、そういう人たちは、
朝昼晩3食を病院近くの屋台で食べて、 ほぼ丸一日を 病院で過ごします。
…と、このように書くと、
「医者の数不足」というのが問題であるかのように見えますよね。
でも、根本の問題はそこではなく…
「病院に行くほどのことでもない症状でも、とりあえず病院に行ってみる」
という、住民の考え方に原因があるのだと考えています。
昔は薬局しかなかった
実際のところ、薬を買うだけなら、薬局で十分です。
また、つい数年前まで、タイでは「病院には行かない」という人が多く、
地元の街薬局が病院代わりのようなところがありました。
でも、今思えば、そっちの方が健全な状態だったんじゃないかな、という気がします。
なぜなら、病院も薬局も、やっていることは大して変わらないからです。
薬局なら往復10分ですむところを、
病院に行くためだけに、わざわざ早朝未明から家を出て、
丸1日を病院で過ごすのですが、
結局、薬だけをもらって、夕方家に帰ってきます。
「だったら、薬局でいいんじゃないの?」
って思いませんか。
しかも、
雑菌だらけの病院で1日を過ごし、病院から家に帰る頃にはヘトヘトで、
なおかつ3食外食ですから、そっちの方がよっぽど体に悪いんじゃないかと思うわけです。
発展途上国の病院信仰
これは、とりもなおさず、タイの山の人たちには「病院信仰」があるからです。
「病院なら正しい処置をしてくれるはずだ」という妄信・思い込みです。
こうした病院信仰を打ち破るのは容易ではありません。
「もしも重病だったらどうしよう」という不安があるからです。
でも、本当に重病が発見される、なんていうケースは全体の1%未満で、
残り99パーセント以上の人は、「ただの風邪」です。
下手をすると、
完全に健康体の人が、周囲に勧められるがままに、病院に検査に来ていたりします。
しかし、
「ちょっとの風邪なら自力で治す」という発想が、タイでもどんどん無くなってきていますから、
こうして、タイの人々も、どんどん病院漬けにされていきます。
まとめると…
「医師不足」なんかよりも、「人民の病院への依存」のほうが、よっぽど深刻な問題ではないか、と思うわけです。