タイで少子化が進んでいる最大の原因は? (1)粉ミルクと紙おむつ

なぜタイで、こんなにも少子化が進んでいるのでしょうか。

このテーマはなかなか根が深く、いずれきちんと形にまとめたいと思うのですが、

最近、「タイ 少子化 原因」などのキーワードで検索されることが多くなったので、

回答らしきものをいったん用意しておいた方が良いと思い、思いつくままに理由を列挙してみようと思います。

今回はまず1つめの理由、
「粉ミルクと紙おむつ」です。

1、粉ミルク代と紙おむつ代

タイでも、「育児には金がかかる」というのが定説で、

中でも特に大きいのが、粉ミルク代と紙おむつ代です。

ミルクとおむつが生活を圧迫する

まず、粉ミルクは、
1ヶ月約1000~2000バーツ。

(1バーツ約2.8円)

おむつは、交換の頻度にもよりますが、

おむつ1パック200バーツ分が4,5日でなくなる、というのが平均値です。

すると、1ヶ月では約1500バーツ。

つまり、粉ミルク代と紙おむつ代だけで、

毎月2000~4000バーツが飛んでいくことになります。

収入の15%以上!

仮に、タイ人の世帯月収が2万バーツだとして、

収入のじつに15%以上が粉ミルク代と紙おむつ代です。

これは、月収30万円の日本人が、粉ミルクと紙おむつに「毎月5万円」かかっているようなものです。

しかも、タイ人の場合、月収の7~9割を、ローンの返済に充てていますから、こうなると、

「ミルクとおむつを買ったら、お金が残らない」

ってことになります。

なので、一般家庭にとっては、

「粉ミルク代と紙おむつ代を考えると、経済的に、産むのは厳しい」

という判断になるわけです。

母乳出なさすぎ?

しかし、この問題は、

「なぜそんなにも母乳が出ないのか」

という問題とも関連します。

母乳さえキチンと出れば、そこまで大量の粉ミルクを買い続けなくても済むからです。

なので、現代のタイは、

母乳が出ない女性が増えた

ミルク代に金がかかる

お金が無くて子供を産めない

という風に、各問題がリンクし合っているわけです。

母乳育児は恥ずかしい?

また、母乳が出ても、「人前であげるのが恥ずかしい」と感じるタイ人女性も多く、

せっかくの母乳を、絞って捨てたりします。

これは、発展途上国特有の、

「自然物よりも工業製品の方がグレードが高い」

という思い込みによるものです。

結果的に、母乳育児はますます減少の一途をたどっていくわけです。

おむつ使いすぎ?

また、おむつも同様です。

昔はタイも、布おむつが普通で、

さらに言えば、南国の開放的な家屋で、赤ちゃんのおしっこなんて普通に垂れ流しでした。

我が家では今も赤ちゃんのおむつは寝る前にしかつけない。
タイはずっとそれが当たり前だった。

それが、ここ10年ぐらいの間に、

「乳幼児は朝から晩までおむつをしていて当たり前」

という風潮になったんです。

おむつは輸入品で、高額であるにも関わらず、です。

なので、タイでは「おむつ」のことを、普通に日本語で「パンパース」と言います。

結論

つまり、何が言いたいかというと…

「粉ミルク代と紙おむつ代が生活費を圧迫するから子供が産めない」

というのが、タイの少子化の一応の理由ではあります。

しかし、その前に、もっと重要なことがあります。

「えっ、あんたら、今まで粉ミルクも紙おむつも見たことなかったやん!」

「ミルクもおむつも、元々輸入品やん!」

「そんなん一切無しで、5人も6人も育ててたやん!」

「なんでいきなり、『粉ミルクと紙おむつがないと育児できひん』みたいになってしもたん?」

……という風に、タイでは「そもそもの前提条件」がおかしいわけです。

なので、この問題は、あえて一言のワードで言い換えると、

「道具への依存」

ってことになります。

道具を持ったことがない人が道具を与えられると、

その道具が生活を圧迫することが分かっていても、

生活やその他を犠牲にしてまでも、道具を得ようとする。

そして、道具を得た者は、道具を手放すことができない。

……これは、ほぼすべての途上国に共通する鉄則ですが、

人間そのものが持っている性質でもあります。

「少子化」に話を戻すと、現代タイ人は、粉ミルクと紙おむつに依存しきってしまっているために、

「それがない生活」を考えることすらできなくなり、

結果的に、「粉ミルクと紙おむつ」が買えないために、子を産めなくなってしまう…

ということです。

つい十数年前まで、そんなものなくても育児ができていたにも関わらず、です。



この「少子化」の問題は、様々な要素がかなり複合的に絡み合っているので、

数ページではとても書き尽くすことができません。

今後も1つ1つ、順を追って、お話ししていこうと思います。

今回は、タイの少子化の原因の1つめ、
「粉ミルクと紙おむつ」のお話でした。

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