タイの少子化がこれほどまでに進んでしまった原因の1つに、「タイ人の高学歴化」があります。
しかし、この「学歴」というキーワードには、2つの意味があります。
それは、
母親となる女性の学歴。
そして、
子供の学歴です。
まず1つ目は、母親となる女性の学歴。
これまで、タイの一般庶民の女性は、15~6歳で子供を産んでいました。
昔は、学歴も中卒が当たり前で、高卒なら高い方、大卒なんて超エリート、という時代でした。
しかし近年、海外の人権団体や婦人団体などが躍起になって、
「低年齢出産をやめさせる・教育の機会を与える」
などの活動を続けました。
もちろん、教育を受けられること自体は悪いことではないでしょう。
しかしその結果、タイ人女性の多くが「中卒で子どもを産むは悪いこと」という考えを持つようになり、
女性も高校、大学まで進むのが当たり前、という風潮になりました。
では、教育を受けた女性は、大学を卒業してから子供を産むのかというと、
「どうやらそうでもない」というのが、実情です。
これは、日本も同じですよね。
大学まで出た女性は、
「せっかく学歴を得たのだから、家庭に入ってしまうのはもったいない」
と考えます。
こうしてタイでも晩婚化が進み、なおかつ、出産後も仕事を続けたいと考えますから、
出生人数もますます低下し続けていくわけです。
先程の「海外の人権団体」に話を戻すと、
人権団体としては、
「やった! タイ人女性の学歴が上がった! 若年出産が減った!」
と、喜んでいるのかもしれません。
しかし、これは何とも一方的な物の見方だと言わざるを得ません。
こうした人権団体たちは、まるで、
「学歴がなくて若いお母さんは不幸」
「学歴があって晩婚は幸せ」
と決めつけてしまっています
そして、外からやってきて、タイ国内の事情を完全に無視して、一方的に自分たちの価値観を押し付け、寄付や慈善活動などを行います。
そもそも教育なんてものが必要のなかった層にまで、無理矢理教育を押しつけ、学費を援助し、
「貧しい少女を大学に行かせることができました!!」
なんて言って、はしゃいでいます。
でも、その少女が、大学を出たことによって幸せになれたのかどうか、ずっと家にいたら不幸だったのかどうかなんて、誰にもわかりませんよね。
それに、「先祖代々農家」というような家にとっては、早めに結婚して、労働力である子供をたくさん作って、農地を繁栄させていくほうが、理にかなっています。
農家の娘が、家も継がずに大学へ行って、都市で職を得て、そのまま都市に住む…
なんてことになってしまうと、現金は多く得られるかもしれませんが、農家としては断絶します。
これは、バブル期以降、日本でどんどん農家が減っていったのと非常によく似ています。
結果的に、「現金を得られる」ことがアドバンテージであったはずが、いつしか、「現金のための奴隷」となって生き続けることになってしまいます。
ほんの十数年前まで、低学歴で現金なんて持っていなくても、たくさんの子供に囲まれて楽しく暮らせていたのにもかかわらず、です。
こうなると、タイの一般庶民の人たちは、大学なんて行かずに、
タイの豊かな大自然の中で、子供を産み育て、「食べるものならいくらでもある」という環境で暮らしていた方が、
長期的に見て、よっぽど幸せだったのではないか、と思うわけです。
まとめると…
理想としては、
「教育を受けたあとで、自ら進んで農家を継いで、衣食住を確保し、子どもをたくさん作る」
というのができれば、母親となる女性本人も幸せで、少子化も改善され、一番素晴らしいとは思いますが、やはり現実はなかなかそうはいきません。
「国民の学歴が上がった分だけ、人口が減っている」
というのが実情です。
そもそも、「学歴=教育レベル」ではありません。
学歴をゲットしたいと思うのは大いに結構なのですが、現代のタイでは、それによって失うものがあまりにも大きすぎると思うわけです。